特定のウラン加工施設のための安全審査指針
平成12年8月7日
原子力安全委員会
核燃料安全基準専門部会
○特定のウラン加工施設のための安全審査指針
平成12年 月 日
原子力安全委員会決定
まえがき
本指針は、平成11年9月30日に起こった株式会社ジェー・シー・オーでの臨界事故を踏まえ、濃縮度が比較的高いウランを転換、加工する施設の安全審査を客観的かつ合理的に行うため、核燃料施設安全審査基本指針(昭和55年2月7日原子力安全委員会決定)に基づき、当該施設に対する安全審査上の指針としてとりまとめたものである。
本指針は、上記加工施設の安全審査上重要と考えられる基本事項についてとりまとめているので、安全審査の段階において十分に満足されなければならない。しかし、事業者の申請内容が本指針に適合しない場合があったとしても、それが技術的な改良、進歩等を反映して、本指針が満足される場合と同等の安全性を確保し得ると判断される場合、これを排除するものではない。
本指針は、今後の知見の増大と原子力利用の進展に応じ、適宜見直しを行うものとする。
なお、本指針は、上記臨界事故を踏まえ、適切な安全審査に資するとの観点から、臨界に関する特記事項を解説に示した。
T.適用対象
本指針は、加工の事業の許可(変更の許可を含む。)の申請に係る加工施設であって、濃縮度5%を超え、20%未満のウランを転換、加工する施設(以下「特定のウラン加工施設」という。)に適用される。ただし、ここでいうウランとは、次に掲げる各号のいずれかに該当するものをいう。
(1) 未照射ウラン
(2) 燃料集合体最高燃焼度50,000MWd/tU以下の使用済燃料を湿式法(ピューレックス法)により再処理し、回収したウラン
(3) 上記(1)(2)のウランを任意の比率で混合したウラン
なお、上記(2)、(3)に本指針を適用する場合には、指針の各号について、その中の放射性物質の種類及び量を十分考慮すること。
U.用語の定義
本指針において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
1.「放射線業務従事者」とは、原子炉等規制法関係法令に定める放射線業務従事者をいう。
2.「安全上重要な施設」とは、次の各号に掲げるとおり、その機能喪失により、一般公衆及び放射線業務従事者に過度の放射線被ばくを及ぼすおそれのある建物・構築物、系統及び設備・機器並びに事故時に一般公衆及び放射線業務従事者に及ぼすおそれのある過度の放射線被ばくを緩和するために設けられた建物・構築物、系統及び設備・機器をいう。
(1) ウランを非密封で大量に取扱う設備・機器
(2) ウランを限定された区域に閉じ込めるための設備・機器であって、その機能喪失により作業環境又は周辺環境に著しい放射能汚染の発生のおそれのあるもの
(3) 臨界安全上核的制限値のある設備・機器及び当該制限値を維持するために必要な設備・機器
(4) 臨界警報装置及び未臨界にするための措置に関連する設備・機器
(5) 火災・爆発等の防止上、熱的制限値又は化学的制限値のある設備・機器及び当該制限値を維持するために必要な設備・機器
(6) 非常用電源等であって、その機能喪失により特定のウラン加工施設の安全性が著しく損なわれるおそれのある系統及び設備・機器
(7) 上記(1)〜(6)の設備・機器が設置されている建物・構築物
上記施設のうち、その機能喪失により、一般公衆及び従事者に過度の放射線被ばくを及ぼすおそれのないことが明らかな場合は、これを安全上重要な施設から除外することができる。
3.「最大想定事故」とは、安全上重要な施設との関係において、技術的にみて発生が想定される事故のうちで、一般公衆の線量当量が最大となるものをいう。
4.「単一ユニット」とは、臨界管理を考える場合に対象となる核燃料物質取扱い上の一つの単位をいう。
V.立地条件
指針1.基本的条件
事故の誘因を排除し、災害の拡大を防止する観点から特定のウラン加工施設の立地地点及びその周辺における以下の事象を検討し、安全確保上支障がないことを確認すること。
(1) 自然環境
@ 地震、洪水、台風、豪雪、高潮、津波、地すべり、陥没等の自然現象
A 風向、風速、降雨量等の気象
B 河川、地下水等の水象及び水理
C 地盤、地耐力、断層等の地質及び地形等
(2) 社会環境
@ 近接工場等における火災、爆発等
A 農業、畜産業、漁業等食物に関する土地利用及び人口分布等
指針2.平常時条件
平常時における特定のウラン加工施設から環境への放射性物質の放出等に伴う一般公衆の線量当量が、法令に定める線量当量限度を超えないことはもとより、合理的に達成できる限り低いものであること。
1.排気中のウランによる一般公衆の被ばく
(1) 特定のウラン加工施設で取扱うウランの形態・性状及び取扱量、工程から排気系への移行率並びに高性能エアフィルタ等除去系の捕集効率を考慮して排気に含まれて放出されるウランの年間放出量を算定すること。
(2) (1)で求めたウランの年間放出量からみて、十分な安全裕度のある拡散条件を考慮しても、一般公衆の線量当量が極めて小さくなることが明らかな場合には、線量当量の評価は要しないものとする。
(3) (2)以外の場合には、適切な方法により、一般公衆の線量当量を計算し、合理的に達成できる限り低いものであることを確認すること。
2.排水中のウランによる一般公衆の被ばく
(1) 特定のウラン加工施設から排水に含まれて放出されるウランの年間放出量又は年間平均濃度からみて、十分な安全裕度のある拡散条件を考慮しても、一般公衆の線量当量が極めて小さくなることが明らかな場合には、線量当量の評価は要しないものとする。
(2) (1)以外の場合には、適切な方法により一般公衆の線量当量を計算し、合理的に達成できる限り低いものであることを確認すること。
指針3.事故時条件
特定のウラン加工施設に最大想定事故が発生するとした場合、一般公衆に対し、過度の放射線被ばくを及ぼさないこと。
1.事故の選定
特定のウラン加工施設の設計に即し
(1) 有機溶媒、水素ガス等の火災・爆発
(2) 六ふつ化ウラン、二酸化ウラン粉末等の飛散、漏洩
(3) ウランによる臨界
(4) 自然災害
等の事故の発生の可能性を技術的観点から十分に検討し、最悪の場合、技術的にみて発生が想定される事故であって、一般公衆の放射線被ばくの観点からみて重要と考えられる事故を選定すること。
2.放射性物質の放出量等の計算
1で選定した事故のそれぞれについて、技術的に妥当な解析モデル及びパラメータを採用するほか、次の事項に関し、十分に検討し、安全裕度のある妥当な条件を設定して、放射性物質の放出量等の計算を行うこと。
(1) 放射性物質(ウランを含む。以下同じ。)の形態・性状及び存在量
(2) 放射線の種類及び線源強度
(3) 事故時の閉じ込め機能(高性能エアフィルタ等の除去系の機能を除く。)の健全性
(4) 排気系への移行率
(5) 高性能エアフィルタ等除去系の捕集効率
(6) 遮蔽機能の健全性
(7) 臨界の検出及び未臨界にするための措置
3.線量当量の評価
1で選定した事故のうち、2の計算により一般公衆に対して最大の放射線被ばくを及ぼす事故を最大想定事故として設定し、一般公衆の線量当量を計算し、一般公衆に対し、過度の放射線被ばくを及ぼさないよう離隔が確保されることを確認すること。
W.放射線管理
指針4.閉じ込めの機能
特定のウラン加工施設は、以下の対策を講ずることにより、放射性物質を限定された区域に閉じ込める機能を有する設計であること。
1.作業環境の汚染防止に対する考慮
(1) 管理区域は、ウランを密封して取扱い又は、貯蔵し、汚染の発生するおそれのない区域(第2種管理区域)とそうでない区域(第1種管理区域)とに区分して管理すること。
(2) 作業環境の汚染を防止するため、ウランを収納する設備・機器は、飛散又は漏洩のない構造であること。
(3) 第1種管理区域において、ウランを取扱う工程の設備・機器のうち、ウランが空気中へ飛散するおそれのあるものについては、局所排気系を設けること等によりウランの空気中への飛散を防止できるような構造とすること。
(4) 第1種管理区域にはウラン除去機能をもつ排気系統を設け所要の換気を行うこと。
(5) 第1種管理区域において、内部の床・壁の表面はウランが浸透しにくく、除染が容易で、腐食しにくい材料で仕上げること。
2.周辺環境の汚染防止に対する考慮
(1) 第1種管理区域は、漏洩の少ない構造とするとともに、当該区域の外から当該区域に向って空気が流れるように給排気のバランスをとること。
(2) 第1種管理区域において、汚染のおそれのある空気を排気する系統には、周辺環境の汚染を合理的に達成できる限り少なくするため、高性能エアフィルタ等適切なウラン除去設備を設けること。また、それらの機能が十分であること。
(3) 事故時において、放射性物質の飛散するおそれのある部屋は、漏洩の少ない構造であること。
指針5.放射線遮蔽
特定のウラン加工施設においては、放射線業務従事者の放射線被ばくを低減するという目的のために必要な箇所に放射線遮蔽を施すこと。
指針6.放射線被ばく管理
1.作業環境における放射線被ばく管理
ウランが取扱われる部屋の線量当量率、ウランの表面密度及び空気中濃度を十分に監視、管理するため
(1) サーベイメータ、ダストモニタ等の監視設備・機器を設けること。
(2) 第1種管理区域入口等には、防塵マスク等適切な呼吸保護具を備えること。
(3) 適切なところに放射線管理担当者が駐在できる施設を設けること。この施設には放射線管理上必要な監視、通報設備が設けられていること。
2.放射線業務従事者等の個人被ばく管理
放射線業務従事者等の個人被ばく管理に必要な線量計等の機器を備えること。
X.環境安全
指針7.放射性廃棄物の放出管理
1.放射性気体廃棄物の放出管理
特定のウラン加工施設で発生する放射性気体廃棄物については、排気に含まれて周辺環境へ放出されるウランを合理的に達成できる限り少なくするため、高性能エアフィルタ、エアウォッシャ等の適切な除去設備を設けること。
特に粉末ウラン処理工程等ウランの排気系への移行率が高いと考えられる工程からの排気系には、2段以上の高性能エアフィルタを設けること。
2.放射性液体廃棄物の放出管理
特定のウラン加工施設で発生する放射性液体廃棄物については、排水に含まれて敷地境界外へ放出されるウランを合理的に達成できる限り少なくするため、凝集沈殿設備、濾過設備、蒸発濃縮設備、稀釈設備、イオン交換設備等の適切な廃液処理設備を設けること。
指針8.貯蔵等に対する考慮
六ふつ化ウラン、二酸化ウラン、燃料集合体等の加工原料若しくは加工製品の貯蔵又は放射性廃棄物の保管廃棄に起因する線量当量を特定のウラン加工施設敷地境界外における人の居住する可能性のある地点において、十分な安全裕度のある条件を設定して計算することとし、その値が合理的に達成できる限り低いものであることを確認すること。
指針9.放射線監視
1.気体廃棄物及び液体廃棄物の放出口又はその他の適切な箇所において、それぞれ放射性物質の濃度等を適切に監視するための対策が講じられていること。
2.放射性物質の放出の可能性に応じ、周辺環境における線量当量、放射性物質の濃度等を適切に監視するための対策が講じられていること。
3.上記1及び2に述べた周辺環境等における放射線監視については、事故時においても線量当量率、放射性物質の濃度等に関する情報を得るための対策が講じられていること。
Y.臨界安全
指針10.単一ユニットの臨界安全
特定のウラン加工施設における単一ユニットは、技術的にみて想定されるいかなる場合でも、単一ユニットの形状寸法、質量、容積、溶液濃度の制限及び中性子吸収材の使用等並びにこれらの組合せによって核的に制限することにより臨界を防止する対策が講じられていること。このため
(1) ウランを収納する設備・機器のうち、その寸法又は容積を制限し得るものについては、その寸法又は容積について核的に安全な制限値が設定されていること。この場合、溶液状のウランを取扱う設備・機器については、全濃度安全形状を基本とする。
(2) 上記(1)の規定を適用することが困難な場合には、取扱うウラン自体の質量や溶液中の濃度等について核的に安全な制限値が設定されていること。この場合、誤操作等を考慮しても工程中のウランが上記の制限値を超えないよう、十分な対策が講じられていること。
(3) ウランの収納を考慮していない設備・機器のうち、ウランが流入するおそれのある設備・機器についても上記(1)(2)に規定する条件が満たされていること。
(4) 核的制限値を設定するに当たっては取扱われるウランの化学的組成、濃縮度、密度、溶液の濃度、幾何学的形状、減速条件、中性子吸収材等を考慮し、特に立証されない限り最も厳しい結果を与えるよう、中性子の減速、吸収及び反射の各条件を仮定し、かつ、測定又は計算による誤差及び誤操作等を考慮して十分な裕度を見込むこと。
(5) 核的制限値を定めるに当たって、参考とする手引書、文献等は、公表された信頼度の十分高いものであり、また、使用する臨界計算コード等は、実験値等との対比がなされ、信頼度の十分高いことが立証されたものであること。
(6) 核的制限値の維持・管理については、起こるとは考えられない独立した二つ以上の異常が同時に起こらない限り臨界に達しないものであること。
指針11.複数ユニットの臨界安全
特定のウラン加工施設における複数ユニットの配列については、技術的にみて想定されるいかなる場合でも、ユニット相互間における間隔の維持又はユニット相互間における中性子遮蔽の使用等により臨界を防止する対策が講じられていること。
このため
(1) ユニット相互間は核的に安全な配置であることを確認すること。
(2) 核的に安全な配置を定めるに当たっては、特に立証されない限り最も厳しい結果を与えるよう、中性子の減速、吸収及び反射の各条件を仮定し、かつ、測定又は計算による誤差及び誤操作等を考慮して十分な裕度を見込むこと。
(3) 核的に安全な配置を定めるに当たって、参考とする手引書、文献等は、公表された信頼度の十分高いものであり、また、使用する臨界計算コード等は、実験値等との対比がなされ、信頼度の十分高いことが立証されたものであること。
(4) 核的に安全な配置の維持については、起こるとは考えられない独立した二つ以上の異常が、同時に起こらない限り臨界に達しないものであること。
指針12.臨界事故に対する考慮
指針10及び指針11を満足することにより臨界を防止することとしているが、万一の臨界事故を想定し、これに対する適切な対策が講じられていること。このため、
(1) 特定のウラン加工施設は、臨界警報装置その他の臨界事故の発生を想定した適切な措置(臨界及びその継続性の検知)が講じられる設計であること。
(2) 指針3で臨界事故の発生が想定される施設において臨界事故が発生したとしても、これを未臨界にするための措置が講じられる設計であること。
Z.その他安全対策
指針13.地震に対する考慮
特定のウラン加工施設は、その重要度により耐震設計上の区分がなされるとともに、敷地及びその周辺地域における過去の記録、現地調査等を参照して、最も適切と考えられる設計地震力に十分耐える設計であること。
1.耐震設計上の重要度分類
特定のウラン加工施設の耐震設計上の重要度を、地震により発生する可能性のあるウランによる環境への影響の観点から、次のように分類すること。
(1) 設備・機器(配管、ダクト等を含む。以下同じ。)
第1類……非密封ウランを取扱う設備・機器及び非密封ウランを閉じ込めるための設備・機器、臨界安全上の核的制限値を有する設備・機器及びその制限値を維持するための設備・機器等であって、その機能を失うことによる影響、効果の大きいもの。
第2類……非密封ウランを取扱う設備・機器及び非密封ウランを閉じ込めるための設備・機器並びに臨界安全上の核的制限値を有する設備・機器及びその制限値を維持するための設備・機器であってその機能を失うことによる、影響、効果が小さいもの及び化学的制限値又は熱的制限値を有する設備・機器。
第3類……第1類、第2類以外のもの。
(2) 建物・構築物
第1類……第1類の設備・機器を収納する建物・構築物
第2類……第2類の設備・機器を収納する建物・構築物
第3類……第1類、第2類以外のもの
2. 耐震設計評価法
(1) 方 針
特定のウラン加工施設は、次に示す耐震設計に関する基本的な方針を満足していること。
@ 耐震設計は、原則として静的設計法によること。
A 上位の分類に属するものは、下位の分類に属するものの破損によって波及的破損が生じないこと。
B 上位の分類の建物・構築物と構造的に一体に設計することが必要な場合には、上位分類の設計法によること。
C 設備・機器の設計に当たっては剛構造となることを基本とし、それが困難な場合には動的解析等適切な方法により設計すること。
(2) 建物・構築物の耐震設計法
特定のウラン加工施設における建物・構築物の耐震設計法については、各類とも原則として静的設計法を基本とし、かつ、建築基準法等関係法令によること。
ただし、第1類及び第2類の建物・構築物については、それぞれ耐震設計上の静的地震力として、建築基準法施行令第88条から定まる最小地震力に下記に掲げる割り増し係数を乗じたものを用いること。また、建築基準法施行令第82条の3第1号及び第3号による場合には下記に掲げる割り増し係数を乗じ、建築基準法施行令第82条の3第2号による場合には下記に掲げる割り増し係数で除したものを用いること。
記
第1類 1.3以上
第2類 1.1以上
(3) 設備・機器の耐震設計法
設備・機器(配管、ダクト等を含む。以下同じ)の耐震設計法については、原則として静的設計法を基本とし
@ 各類ともに一次設計を行うこと。この一次設計に用いる静的地震力は、建築基準法施行令第88条により定まる最小地震力に下記に掲げる割り増し係数を乗じたもの(以下一次地震力という。)を用いること。
ここで「一次設計」とは、常時作用している荷重と一次地震力を組合わせ、その結果発生する応力に対して、降伏応力又はこれと同等な安全性を有する応力を許容限界とする設計をいう。
A 第1類については、上記@の一次設計に加え、二次設計を行うこと。ここで「二次設計」とは、常時作用している荷重と一次地震力を上回る二次地震力とを組み合わせ、その結果発生する応力に対して、設備・機器の相当部分が降伏し、塑性変形する場合でも過大な変形、亀裂、破損等が生じ、その施設の安全機能に重大な影響を及ぼすことがない設計をいう。
上記二次設計は、常時作用している荷重と、一次地震力に下記第1類の割り増し係数を乗じた地震力以上の静的地震力とを組合わせ、その結果発生する応力に対して、降伏応力又はこれと同等な安全性を有する応力に基づいて地震力に応じた適切な許容限界を用いた設計により行うことができる。
記
第1類 1.5以上
第2類 1.4以上
第3類 1.2以上
指針14.地震以外の自然現象に対する考慮
核燃料施設安全審査基本指針でいう「予想される地震以外の自然現象のうち最も苛酷と考えられる自然力」として、敷地及びその周辺地域の自然環境をもとに洪水、津波、台風、積雪等のうち予想されるものに対応して、過去の記録の信頼性を十分考慮のうえ、少なくともこれを下まわらない苛酷なものであって、妥当とみなされるものを選定し、これを設計基礎とすること。
なお、過去の記録、現地調査と結果等を参考にして必要のある場合には、異種の自然現象を重畳して設計基礎とすること。
指針15.火災・爆発に対する考慮
1.不燃性材料の使用等
特定のウラン加工施設の建家は、建築基準法等関係法令で定める耐火構造又は不燃性材料で造られたものであること。また、設備・機器は実用上可能な限り不燃性又は難燃性材料を使用する設計であること。
2.可燃性物質の使用対策等
施設においては有機溶媒など可燃性の物質又は水素ガスなど爆発性の物質を使用する設備・機器は火災・爆発の発生を防止するため、発火及び異常な温度上昇の防止対策、水素ガス漏洩、空気の混入防止対策等適切な対策が講じられていること。
3.火災・爆発の拡大防止対策
万一の火災・爆発を想定し、その拡大を防止するための適切な検知、警報設備及び消火設備が設けられているとともに、汚染が発生した部屋以外に著しく拡大しないよう適切な対策が講じられていること。
指針16.電源喪失に対する考慮
特定のウラン加工施設においては、停電等の外部電源系の機能喪失時に
(1) 第1種管理区域の排気設備
(2) 放射線監視設備
(3) 火災、臨界等の警報設備、緊急通信・連絡設備、非常用照明灯
等、安全上必要な設備・機器を作動し得るのに十分な容量及び信頼性のある非常用電源系を有すること。
指針17.放射性物質の移動に対する考慮
特定のウラン加工施設においては、ウランの工程間、工程内移動に際し、移動するウランの形態、形状に応じて漏洩防止、放射線遮蔽、臨界防止等適切な対策が講じられていること。特に、ウランを不連続的(バッチ処理)に取扱う施設は、次の工程の核的制限値等が満足されなければ移動できないような設備設計上の対策が講じられていること。
指針18.事故時に対する考慮
特定のウラン加工施設においては、事故時に対応した以下の対策が講じられていること。
(1) 事故に対応した警報、通信連絡、従事者の退避等のための適切な対策が講じられていること。
(2) 適切な放射線計測器、放射線防護具等が確保されていること。
(3) 通常の照明用の電源が喪失した場合においても、その機能を失うことのない退避用の照明を設備し、かつ、単純、明確、永続性のある標識のついた安全退避通路を有する設計であること。
指針19.共用に対する考慮
安全上重要な施設のうち、当該特定のウラン加工施設以外の原子力施設との間、又は当該特定のウラン加工施設内で共用するものについては、その機能、構造等から判断して、共用によって当該特定のウラン加工施設の安全性に支障をきたさないことを確認すること。
指針20.準拠規格及び基準
安全上重要な施設の設計、工事及び検査については「核燃料物質の加工の事業に関する規則」、「試験研究の用に供する原子炉等の設置、運転等に関する規則等の規定に基づき、線量当量限度を定める件」等に定める規格及び基準に基づくとともに、原則として建築基準法、日本工業規格(JIS)等に定める規格及び基準に準拠すること。なお、国内において規定されていないものについては、必要に応じて十分使用実績があり、信頼性の十分高い国外の規格及び基準に準拠すること。
指針21.検査、修理等に対する考慮
安全上重要な施設は、その重要度に応じ、適切な方法により安全機能を確認するための検査及び試験並びに安全機能を健全に維持するための保守及び修理ができるようになっていること。
解 説
濃縮度5%を超えるウラン加工施設に対する安全審査では、これまで多種多様な核燃料施設の安全審査に際し、統一的な観点からの評価が可能となるよう、核燃料施設に共通した安全審査の基本的考え方をとりまとめた核燃料施設安全審査基本指針を用いてきた。しかし、平成11年9月30日に発生した臨界事故が濃縮度18.8%のウランを取扱うウラン加工施設で起きたこと、また、過去の国内外でのウランによる臨界事故は全て5%を超える濃縮度の場合に発生していることに鑑み、濃縮度が比較的高いウランを取扱うウラン加工施設の特質に応じて個別の安全審査指針として本指針を整備することとしたものである。
適用対象
濃縮度20%未満のウランを取扱うウラン加工施設が存在すること、また、濃縮度20%以上の高濃縮ウランをウラン加工施設で取扱うことについて想定されていないことから、本指針の適用対象となる加工施設を「濃縮度5%を超え、20%未満のウランを転換、加工する施設」とした。
指針3.事故時条件
1.臨界事故に関し、技術的にみて発生が想定されない場合の例示を以下にあげる。
(1) ウランが流入する恐れのある設備・機器も含めて、全ての設備・機器が全濃度安全形状で管理されている場合。
(2) 質量管理、濃度管理等において、十分に高い信頼性を有する方法による多重化又は多様化された計装設備により管理されている場合。
2.放射性物質の放出量等の計算において、臨界事故の影響を緩和するために従事者の手動操作が必要な場合について適切な時間的余裕を考慮すること。
指針10.単一ユニットの臨界安全
1.「核的制限値」とは、臨界管理を行う体系の未臨界確保のために設定する値である。この値は、具体的な設備・機器の設計及び運転条件の妥当性の判断を容易かつ確実に行うために設定する計量可能な値であり、この値を超えた設備・機器の製作並びに平常時における運転条件の設定は許容されない。
2.「核的制限値を超えないよう十分な対策」とは、例えば、核的制限値以下であることが確認されなければ、次の工程に進めないようにするための装置(インターロック等)を設けることや、推定臨界下限濃度以上の溶液状のウランを取扱う設備・機器に対し、質量又は濃度について核的制限値を設定し管理する場合には、臨界に対する抵抗性をより高くするとの観点から、使用条件に応じた容積上の制限を追加することである。
3.「起こるとは考えられない独立した二つ以上の異常が同時に起こらない限り臨界に達しないものであること」とは、いわゆる二重偶発性の原理を示したものである。すなわち、工程/設備の臨界管理を行う上で、第1の管理項目が何らかの異常で逸脱した場合においても、第2の障壁により臨界となる事態を未然に防止する設計/管理がなされていることである。原子炉施設で言うところの単一故障の考え方に似ているが、単一故障が機器の有する機能の喪失を対象とするのに対し、二重偶発性の原理はそれに限定されず人の誤操作も含めた異常を対象とする点で異なる。但し、単一の異常(事象)で事故には達しないとの要求は同じである。
指針11 複数ユニットの臨界安全
「核的に安全な配置の維持」とは、ウランを収納する設備・機器の設置に当たって、十分な構造強度をもつ構造材を用いて固定することである。なお、固定することが困難な設備・機器については、当該設備・機器の周囲にユニット相互間における間隔を維持するための剛構造物を取り付けるか又は設計上移動範囲を制限することが必要である。
指針12 臨界事故に対する考慮
濃縮度5%以下のウラン加工施設を取扱うウラン加工施設安全審査指針では、指針10及び指針11が満足されていれば、臨界事故の考慮は必要ないとしていたが、濃縮度5%を超え、20%未満のウラン加工施設を取扱う本指針においては、臨界事故を考慮し、適切な対策を求めることとした。