文部科学省 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を活用した試算結果

文部科学省 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を活用した試算結果



 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)は、本来は、原子炉施設から大量の放射性物質が放出された場合や、あるいはそのおそれがある場合に、放出源情報(施設から大気中に放出される放射性物質の、核種ごとの放出量の時間的変化)、施設の周囲の気象予測と地形データに基づいて大気中の拡散シミュレーションを行い、大気中の放射性物質の濃度や線量率の分布を予測するためのシステムで、文部科学省によって運用されているものです(参考:SPEEDIによる計算の流れ、http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09030301/04.gif)。しかし、今回の東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故では、事故発生当初から、放出源情報を原子炉施設における測定や、測定に基づく予測計算によって求めることができない状況が続いています。このため、大気中の放射性物質の濃度や空間線量率の変化を定量的に予測するという本来の機能を活用することはできていません。
 ここに示す結果は、このような制約条件のもとで実施された試算を「SPEEDI計算結果の公表に係る基本方針」(文部科学省作成)に従って、原子力安全委員会が条件を設定したものを公開しています。
 【参考】「SPEEDI計算結果の公表に係る基本方針」の策定の経緯について



(1)SPEEDIによる積算線量の試算結果
(※「SPEEDI」の運用は、文部科学省により原子力安全委員会事務局の執務室に派遣された(財)原子力安全技術センターのオペレーターによって行われていた。)
 今回の事故では、原子炉施設における測定によって放出源情報を得ることができないことから、SPEEDIを用いて発電所周辺の放射性物質の濃度や空間線量率の値を計算することができない状態が続いていました。このため、原子力安全委員会では、SPEEDIを開発した(独)日本原子力研究開発機構の研究者の協力を得て、原子炉施設での測定に代わる方法を検討し、試行錯誤を繰り返した結果、環境中の放射性物質濃度の測定(ダストサンプリング)結果と発電所から測定点までのSPEEDIによる拡散シミュレーションを組み合わせることによって、ダストサンプリングによってとらえられた放射性物質が放出された時刻における放出源情報を一定の信頼性をもって逆推定することができるようになりました。こうして推定した放出源情報をSPEEDIの入力とすることによって、過去にさかのぼって施設周辺での放射性物質の濃度や空間線量率の分布を求め、これによる事故発生時点からの内部被ばくや外部被ばくの線量を積算したもの(積算線量)の試算結果を以下の通り公表しています(参考1:今回の事故における原子力安全委員会によるSPEEDIの利用概要)。
 これらの試算結果は、放出源情報の推定におけるものを始めとして種々の不確かさを含んでおり、実際の測定値と一致するものではありません。原子力安全委員会では、補助的な参考情報と位置づけ、原則として、測定値の傾向を説明するためなどの限定的な目的で利用しています。なお、SPEEDIによる積算線量の評価は、参考2に赤い線で示された被ばく経路を対象にしています。
 なお、これらのSPEEDIによる積算線量の計算経緯は、SPEEDIによる積算線量試算の追加公表についてにまとめています。
 1)一歳児甲状腺の内部被ばく等価線量
   空気中のヨウ素131を呼吸によって取り込むことによる1歳児の甲状腺の内部被ばくについての積算線量(等価線量)は、SPEEDIによる空気中のヨウ素131濃度分布の試算結果に基づいています。この試算は、1歳児が1日あたり24時間屋外にいるというきびしい仮定の下に行ったものですが、幼児の内部被ばくを予防するという観点から3月23日に第1回の公表を行いました。
   この結果を踏まえ、3月26日から30日にかけて、上記の試算で線量が比較的高いと推定された地域で、原子力災害現地対策本部において小児甲状腺被ばく調査が実施されました。その結果、スクリーニングレベルを超える例はありませんでした(第31 回原子力安全委員会 資料第4-3 号)。
   原子炉の状態が比較的安定となるのに従って大気中のヨウ素131濃度は低下しており、このために積算線量は4月6日以後、あまり増加していません。
  (3月12日午前6時から3月24日午前0時までの積算線量)
  (3月12日午前6時から4月6日午前0時までの積算線量)
  (3月12日午前6時から4月24日午前0時までの積算線量)
 
 2)成人の外部被ばくによる実効線量
   成人の外部被ばくについての積算線量(実効線量)は、外部被ばくは、参考2に示すように、主として、大気中の放射性物質の濃度が高い部分(放射性プルーム)からのガンマ線と、地表に沈降・沈着した放射性物質からのガンマ線によって起こります。SPEEDIでは、大気中の放射性物質濃度と地表沈着量を計算することによって、二つの経路による外部被ばくの積算線量を求めていますが、今回の事故では事故の比較的初期に放出されて地表に沈着した放射性物質の寄与が大きいことがわかっています。ここに示す外部被ばく積算線量の分布は、SPEEDIによって計算された放射性物質の地表濃度分布にほぼ対応しています。
   4月6日までの積算線量は、4月10日の原子力安全委員会において、計画的避難区域の設定と防護区域の設定についての助言を取りまとめるに当たり、実測された積算線量分布と対比する形で活用しました。
  (3月12日午前6時から3月24日午前0時までの積算線量)
  (3月12日午前6時から4月6日午前0時までの積算線量)
  (3月12日午前6時から4月24日午前0時までの積算線量)

上記の積算線量の試算にあたり、放出源情報を逆推定するのにSPEEDIを用いたものは、次のとおりです。
 1)放出源情報の逆推定に用いるダストサンプルを採取するのに適切な場所と時刻を推測するため、「単位量放出」を仮定して翌日の放射性プルームの拡散予測を行いました。この結果に基づき、文部科学省に対して翌日のダストサンプリングの場所及び時刻を助言しました。
  計算結果

 2)ダストサンプリング結果に基づき、発電所からの放射性物質の放出率を推定するため、種々の放出率による拡散計算を行う等により、放出率の精度向上を図りました。
  計算結果



(2)SPEEDIによるさまざまな仮定をおいて行った試算例
(※「SPEEDI」の運用は、文部科学省により原子力安全委員会事務局の執務室に派遣された(財)原子力安全技術センターのオペレーターによって行われていた。)
 今回の事故で原子力安全委員会は、さまざまな仮定をおいてSPEEDIによる試算を行っております。これらは、助言等の原子力安全委員会としての活動を行うにあたり、内部検討的に行ったものであります。そのため、入力数値や計算条件等に現実とそぐわないものも含まれます。このような試算ではありますが、SPEEDIにおいて計算したものはすべて公開するとの方針のもと、公表をいたします。なお、公表につきましてはデータ整理が済み次第、順次公表してまいります。
  
避難区域等の継続的必要性の検討のための試算
 計画的避難区域等の設定の検討を進める中で、避難区域、屋内退避区域が引き続き必要か検討するために、原子炉施設において、発生のリスクは小さいが否定できない放射性物質の放出の事象(燃料の温度上昇による放出+溶融炉心・コンクリート反応による放出)について、放射性物質の拡散状況を確認するため試算を行いました。この際、今後の当該地域における季節特有の気象状況を考慮するため、昨年の4月から9月までの代表的な気象データを用いて試算を行いました。なお、放出率を変えた2パターンについて試算を行いました。
 パターン1(4月6日計算)   パターン2(4月8日計算)
  内部被ばく   内部被ばく
  外部被ばく   外部被ばく
  風速場(地上高)    
  
天候状況を踏まえた長期影響予測
 発電所周辺における今後半年程度の季節特有の拡散状況を把握するため、昨年の4月から9月までの代表的な気象データを用いて、単位量放出を仮定した放射性物質の拡散状況について試算を行いました。
 試算結果(4月10日計算)          
 内部被ばく   外部被ばく
  
モニタリング結果の評価
 文部科学省から情報提供を受けた環境モニタリング結果の評価にあたり、参考として放射性物質の定性的拡散傾向を把握するため、モニタリング時点におけるさまざまな放出を仮定した試算を行いました。
  試算結果
  
その他
 1号機からの放射性物質の放出を仮定した試算を行いました。
  試算結果



(3)文部科学省におけるSPEEDIによる計算結果
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)等の計算結果について(※文部科学省ウェブサイトへリンク)
 



(4)原子力安全・保安院におけるSPEEDIによる計算結果
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の計算結果について(※原子力安全・保安院ウェブサイトへリンク)