第4節 プルトニウムの利用技術
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(概説)
1.核燃料のリサイクル
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原子力発電に使用された使用済燃料から「燃え残った」ウランと原子炉内で生成したプルトニウムを化学的処理により取り出し(再処理)、再利用すること(核燃料のリサイクル)ができます。
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2.MOX燃料
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使用済燃料から回収した二酸化プルトニウムと二酸化ウランを混合した燃料をMOX燃料といい、ウラン燃料と同様に燃料棒、燃料集合体として原子力発電に使用します。
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3.プルサーマル
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軽水炉のような熱中性子炉*1でMOX燃料を使用することをプルサーマルといいます。
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4.高速増殖炉
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高速増殖炉では、プルトニウムを燃料として使用し、高速中性子でプルトニウムを核分裂させながら、燃料中の核分裂しにくいウラン238を核分裂しやすいプルトニウム239に変えることにより、発電しながら消費した以上のプルトニウムを生成することが効率的にできることから、高速増殖炉と呼ばれています。
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5.新型転換炉
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新型転換炉では、ウラン燃料とMOX燃料を燃料として使用し、重水を減速材として使用しています。「ふげん」ではこれまでに体数としては世界最高の700体以上のMOX燃料を1体の燃料破損もなく、使用した実績があります。
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*1 熱中性子炉:熱中性子(35頁参照)を利用して核分裂を起こさせる原子炉です。
(核燃料のリサイクル)
原子力発電に使用される燃料の中に含まれる核分裂しやすいウラン235は、核分裂でエネルギーを放出することにより消費されていきます。しかしながら、燃料を取り替える時点までにすべてが核分裂してしまうのではなく、一部は「燃え残り」ます。また、燃料中の核分裂しにくいウラン238の一部はウラン235の核分裂過程で生じた中性子を吸収して、核分裂性物質であるプルトニウムになります。生成するプルトニウムの一部は、ウランとともに核分裂してエネルギーを放出します。
使用済燃料に含まれるこれらの「燃え残り」のウランや生成されたプルトニウムを化学的処理を行うことによって取り出し、再利用することを核燃料のリサイクルといいます。
(MOX燃料)(Mixed Oxide Fuel;混合酸化物燃料)
ウランとプルトニウムを酸化物の形で混合した燃料のことをMOX燃料といいます。
MOX燃料は、ウラン235(ウラン燃料中に3〜5%まで濃縮されて含まれる)の代わりにプルトニウムを天然ウランや劣化ウラン(天然ウランを濃縮した後に残るウラン)、または回収ウラン(再処理によって回収されたウラン)に混ぜたもので、ウラン燃料と同様に燃料棒、燃料集合体として使用されます。
(ウラン燃料)
- 濃縮ウランでできた燃料。通常、酸化物(UO2)の形をしている。
*濃縮ウラン;燃えやすい(核分裂しやすい)ウラン235(天然ウラン中約0.7%)を3〜5%まで濃縮したウラン(ウラン235の濃縮度が20%以下の場合、低濃縮ウランと呼ばれている。)
- ・ウラン燃料中に含まれる燃えにくいウラン238の一部が原子炉内で中性子を吸収することなどにより燃えやすいプルトニウム239やプルトニウム241が生成。このプルトニウム239やプルトニウム241はウラン235と同じように、原子炉の中で核分裂してエネルギーを放出。このプルトニウムによる発電は、原子炉内の発電量の約30%です(プルサーマルでは、約55%)。
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MOX燃料加工施設は、現在、英国、フランス、ベルギー、ロシアで稼働しています。国内でも新型転換炉「ふげん」や高速実験炉「常陽」、高速増殖原型炉「もんじゅ」のすべてのMOX燃料を加工、使用した実績があります。現在、商業用MOX燃料加工施設の建設が検討されています。
国内ではこれまで、軽水炉で合計6体のMOX燃料の使用実績があります(敦賀1号機、美浜1号機)。また、核燃料サイクル開発機構の新型転換炉「ふげん」では、これまでに700体以上のMOX燃料を使用した実績があります。いずれも使用中の破損はなく、安全に使用されました。また、海外では、ヨーロッパを中心にこれまでの過去約30年間で3,100体以上(経済産業省調べ)の使用実績があります。
こうした国内外の実績から得られる原子炉の運転データ(出力分布等)や取り出したMOX燃料の照射後試験(FPガス*1放出率測定、外観検査等)等によって、MOX燃料に関わる安全設計手法の信頼性を実証する結果が得られています。なお、国内で使用されたMOX燃料は、現在、軽水炉での使用が計画されているもの(MOXのプルトニウム含有率は3〜6%)と同程度のプルトニウム含有率のものから、これより小さい(ふげん用のMOXのプルトニウム含有率は約2%)ものまで様々ですが、MOX燃料の製造技術の蓄積や、MOX燃料の原子炉中での状況に関するデータ(ペレットの温度、中性子の吸収割合等)など、今後の利用に向けて貴重な経験やデータを提供しています。
*1FPガス:ウランやプルトニウムが核分裂して生成するガス。
なお、ウラン燃料も炉内で照射・燃焼すると燃料中のウラン238が中性子を吸収するため、プルトニウムが生成します。この結果、炉内の燃料は燃焼が進むにつれてMOX燃料と同様に相当量のプルトニウムが含まれる状態になります。このように、プルトニウムを軽水炉内で燃焼することは新しいことではなく、現在稼働中の軽水炉で得られるエネルギーの3分の1は結果的にはプルトニウムの燃焼からのものとなっています。
(プルサーマル)
プルトニウムを含んだ燃料を熱中性子炉で利用することを、プルサーマルといいます。現在は、軽水炉でMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)を使用するプルサーマル計画が西欧を中心として世界的に進められています。
「プルサーマル(Plutonium Recycling in Thermal Reactor)」は、<プルトニウム>+<サーマルリアクター(熱中性子炉)>から日本でつくられた合成語です。
<コラム:環境中のプルトニウム>
○環境中のプルトニウム
1945年から1980年の大気圏核実験により、プルトニウムが大気中に放出され、不溶性の酸化物となって陸上や海洋に沈着しています。このプルトニウムはほとんど239と240であることが確認されています。また、プルトニウム238が検出されていますが、これは米国の人工衛星に搭載されたプルトニウムの原子力電池が大気圏に突入して燃えて放出されたものです。陸上に沈着したプルトニウムのほとんどは土壌の表層に沈着します。土壌から植物に取り込まれる割合は、平均して1万分の1程度です。海洋に降下したプルトニウムは表面から深部へ移動しており、数%は海底土に沈着しますが、現在は水深500mから800m当たりのプルトニウム濃度が最大となっており、その濃度は1リットル当たり50マイクロベクレル(百兆分の2グラム相当)です。
○爆弾に使われるプルトニウム
広島に投下された原子爆弾の材料は、ウラン235を95%以上に濃縮したウランを用いた爆弾、長崎に投下されたのは原子炉で生産されたプルトニウムを用いた爆弾です。このプルトニウムと発電用原子炉から回収されたプルトニウムとはどう違うのでしょうか?
プルトニウムには18のアイソトープ(原子量(=原子の重さ)が異なるプルトニウム)があり、一番軽いプルトニウムの原子量は230、一番重いものは247です。発電用原子炉から出てくるプルトニウムのアイソトープは、比率の高い順に原子量239、240、241、242で占められます。ウラン238からできたプルトニウム239は核分裂を起こしやすいのですが、一部は中性子を吸収してプルトニウム240に変わり、これがさらに中性子を吸収して241にというように、運転時間が長くなるにつれて原子量の大きいプルトニウムが増えていきます。米国ではプルトニウムの品質をプルトニウム240の含有比率で区分し、7%以下のものを「兵器級」、18%以上のものを「原子炉級」といっています。発電用原子炉は経済性のためにできるだけ燃料を長く使いますので、原子炉の型式によらずプルトニウム240の比率はほとんど20%以上ですからすべて原子炉級です。兵器級は原子量が239より大きいプルトニウムが増えないように、運転時間を発電用原子炉の数十分の1以下とごく短くして生産されたもので、そのための原子炉を「プルトニウム生産炉」といいます。
では、プルトニウム240の存在はどのような意味を持っているのでしょうか?ウランやプルトニウムは主にアルファ線を出して自然に崩壊しますが、プルトニウム240は中性子を出す自然崩壊もします。 この中性子は原子核が自然に核分裂を起こすことによって生じます。これを「自発核分裂」といいますが、プルトニウム240と242は自発核分裂を起こす確率が他のアイソトープに比べて1万倍以上高いのです。自発核分裂でも中性子を2個以上発生しますので、この中性子が他のプルトニウムを勝手に核分裂させることになります。爆弾としての破壊力は多数の核分裂を瞬間的に起こさせることによって得られますが、プルトニウム240が多いと自然に放出される中性子のため核分裂は計画どおりに行われず、せいぜい小さな爆発力しか得られません。長崎に投下された原爆はプルトニウム240が3%程度のものと考えられていますが、それでも自発核分裂の影響を制限するためにウラン爆弾とは構造や仕組みがまったく異なるものにする必要がありました。従って、発電用原子炉から出る原子炉級プルトニウムでは高度の技術をもってしてもきわめて性能が悪い爆弾しかできず、核兵器の役には立ちにくいことになります。
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(高速増殖炉(FBR)(Fast Breeder Reactor))
高速増殖炉は、燃料にMOX燃料*1を使用し、発電しながら消費した以上のプルトニウムを生み出すことができる原子炉です。高速増殖炉では、中性子を減速させにくく(高速中性子の割合が大きくなる)、熱を伝えやすい流体(ナトリウム等)を冷却材として使用します。
ウラン235やプルトニウム239が熱中性子1個を吸収して核分裂反応を起こす際に放出する中性子の数は、約2個です。これに対し高速増殖炉では、高速中性子1個を吸収し核分裂する際に放出する中性子の数が3個以上です。高速増殖炉では、これを有効に利用するために炉心の周りを天然ウランまたは劣化ウランで囲む構造(ブランケット構造)としています。この結果、高速増殖炉では、消費した以上の核燃料が生成(増殖)します(もんじゅの場合の増殖比は約1.2です)。
従って高速増殖炉が実用化されるとウラン資源の大部分(99.3%)を占めるウラン238をエネルギー資源として利用する技術に道が開かれることになります。
「常陽」は我が国初の高速増殖炉として、昭和53年10月から本格運転を行い、これまでに原子炉に装荷したMOX燃料集合体の総数は478体となっています。この間、MOX燃料の燃料集合体平均の最大燃焼度は約6万8千MWd/tに達しましたが、燃料棒の破損などの問題も起きず、安全に管理・運転されてきています。「常陽」の使用済燃料の一部は核燃料サイクル開発機構の東海事業所高レベル放射性物質研究施設において再処理され、回収されたプルトニウムを用いて新たなMOX燃料が製造され、昭和59年9月に再び「常陽」に装荷されました。
*1高速増殖炉で使用するMOX燃料:プルサーマル用よりもプルトニウム含有率が高濃度(20〜30%)のものを用います。現在のプルサーマル用はBWRの例でプルトニウム含有率が3〜6%。
(新型転換炉(ATR)(Advanced Thermal Reactor))
我が国の新型転換炉「ふげん」はウラン燃料とMOX燃料を使用し、減速材として重水、冷却材として軽水を使用しています。原子炉の構造は圧力管型で、沸騰水型炉(BWR)と似ています。
「ふげん」は、世界に先駆けてMOX燃料利用を進めてきた熱中性子炉です。昭和54年3月の本格運転開始から平成13年12月末までに原子炉に装荷したMOX燃料集合体の総数は726体(プルトニウム量で約1,700kg、核分裂性プルトニウム量(プルトニウム239とプルトニウム241の合計)で約1,300kg)となっています。この間、原子炉に装荷されたMOX燃料の構成比は、最小34%(1/3MOX炉心)から最大72%(3/4MOX炉心)まで変化してきましたが、燃料棒の破損などの問題も起きず、安全に管理・運転されてきています。また、「ふげん」の使用済燃料については、平成13年12月末までに試験用燃料を含め、1,171体が取り出されました。そのうちの34体のMOX燃料が核燃料サイクル開発機構の東海再処理工場において再処理され、回収されたプルトニウムでMOX燃料4体が製造されました。このMOX燃料は昭和63年6月に再び「ふげん」に装荷され、我が国の核燃料サイクルの輪が実証されました。
「ふげん」で使用された燃料について、使用後の健全性を確認するために、照射後試験(燃料集合体を解体、切断し、その状態を調査するための試験)を行って詳細に調査した結果、燃料集合体の異常な変形、損傷などは認められませんでした。また、燃料の原子炉内における状況(ペレット温度、中性子の吸収割合等)についても、ウラン燃料と同程度であったことが確認されています。
なお、「ふげん」は、その役割が終了しつつあることから、平成15年に運転を停止することとなっています。
<コラム:プルトニウムの核燃料以外の利用について>
一部のプルトニウム(Pu238)は、原子力電池の電源として利用されています。実用化されている主な原子力電池は、放射線のエネルギーを熱エネルギーに変え、この熱から半導体などの熱電変換素子によって電気を発生させています。すなわち、アルファ線やベータ線は物質中で容易に熱エネルギーに変わり、物質の温度を上げること、また半導体の中には温度差を与えると電流を発生する性質を有するものがあることから、放射性物質とこの半導体を組み合わせて電池とするものです。
プルトニウムのアイソトープのうちプルトニウム238はウラン238またはネプツニウム237から製造されますが、アルファ線を出し、半減期が約88年と長く、10年以上にわたって安定した電力が得られることから主として宇宙用の原子力電池として利用されています。プルトニウム238は主として酸化物の形態で使用されます。アルファ線による発熱量は1グラム当たり0.56ワットと小さいのが難点ですが、ガンマ線を放出せず、そのための遮へいが必要ないので、小型・軽量化できるという利点があります。
宇宙における原子力電池の最初の利用は、1961年に米国が打ち上げた宇宙探査用ロケットに搭載されたものです。これにはプルトニウム238が2.1キログラムの重量で2.7ワットの電力を1年以上供給しました。米国ではこれまで17台の宇宙用プルトニウム電池の使用実績があり、アポロ12号に搭載された電池は月の表面に設置されて地震観測用の電源として、また、1996年に翌年の7月に火星に着陸した探査機パスファインダには2.6グラムのプルトニウム238が1ワットの熱源として搭載されました。最近では1997年に打ち上げられた土星探査機ホイヘンスに3台のプルトニウム電池が搭載されました。
なお、1978年にプルトニウム電池を搭載した人工衛星が大気圏に突入して燃え尽きる際に、プルトニウム
238が広い地域を汚染する事故が発生しましたが、現在は地球を回る衛星には使用されていません。
また、心臓に規則的な電気パルスを与えるぺースメーカーは体内に埋め込む必要があることから、小型で10年以上使用できるプルトニウム電池がペースメーカの電源として実用化され、かつて欧米で多く使用されていました。現在では寿命の長いリチウム電池が開発されたため、使用されなくなっています。
プルトニウムの利用は核兵器利用のおそれがあることから国際的に厳しく規制されており、発電用以外の利用は上記のように限られた分野となっています。
(主な出典:科学技術振興事業団ホームページ「げんしろう」)
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