第3節 海外の原子力安全の現状
 
1.世界の原子力発電所の現状
 世界の原子力発電所は,1999年(平成11年)12月末現在 425基が運転中であり,発電設備容量としては,35,943万kW,総発電電力量に占める原子力発電の割合は,1996年(平成8年)の実績で約17%となっている。1996年(平成8年)における国(地域)別実績では,リトアニア,フランス等で割合が高く,また,日本においても約35.6%を占めており(図2−79参照),原子力発電が世界のエネルギー供給の大きな柱となっていることが分かる。
 原子力施設等において発生した事故・故障等は,その内容が技術的に専門的であることから,公衆への的確かつ迅速な情報提供と国際的共通理解の形成を図るために策定された国際原子力事象評価尺度(INES)*1を用いて,原子力施設等における事故・故障等の評価が行われている。また,これ以外にも,NEA 及び IAEA が共同で実施している事故・故障評価システム(IRS)があり,技術的内容について加盟国に情報提供を行っている。これを受け,我が国では,原子力安全委員会原子炉施設事故・故障分析評価検討会において,同様の事故の発生を未然に防止するための検討を行っている。また,日本原子力研究所においては IRS の情報をデータベース化し,管理,分析を行っている。
 日本を含めた世界の原子力発電所の平均停止回数を資料編11−2に示す。
 
*1  国際原子力安全事象評価尺度(International Nuclear Event Scale)は,原子力発電所における事故・故障等の通報を標準化し,原子力関係者,報道関係者及び一般公衆との間の理解を促進することを目的にしたものである。IAEA 及び OECD/NEA によって1989年より策定のために検討がなされ,1992年3月に各国に対し正式導入が提言された。(資料編2−23参照)
 

図2−79 各国(地域)別の総発電量に占める原子力

発電の割合(%)−1997年(平成9年)実績− 
 
2.旧ソ連,中・東欧諸国の原子力安全をめぐる動向
 チェルノブイリ原子力発電所の事故が発生して以来,旧ソ連,中・東欧諸国における原子力発電所の安全性に関する懸念は世界的に高まりを示している。特に,第一世代の古い VVER 型炉(加圧水型軽水炉:VVER−440/230)及びチェルノブイリ型の RBMK 型炉(黒鉛減速軽水冷却圧力管型炉)については,格納容器の欠如,緊急炉心冷却系(ECCS)の能力不足など,基本的な設計面での安全性について問題が指摘されている。
 しかし,ソ連の崩壊により経済的・社会的に混乱の状態にある旧ソ連・中・東欧諸国においては自国のみでは安全性向上を図ることは困難な状況にある。
 西側諸国としても何らかの対応の必要性が議論され,二国間の協力及び IAEA 等の国際機関を始め,サミット等の国際的な場において支援の具体的な検討が進められている。
 具体的な支援としては,短期的には,二国間支援,原子力安全基金*1等の支援の早期実施がなされているが,長期的措置については,世界銀行及び経済協力開発機構/国際エネルギー機関(OECD/IEA)によるエネルギー研究報告書を参考にしつつ今後の支援の枠組みを策定することとし,各当事国が危険な原子力発電所の早期閉鎖を可能にするようなエネルギー戦略の策定を支援することとしている。
 1998年(平成10年)度においても,我が国は,IAEA の旧ソ連型原子炉の安全評価のための活動への資金的及び人的支援,運転中の異常検知システムの適用といった技術的支援等を実施している。また,旧ソ連,中・東欧諸国等から原子力技術者を受け入れての原子力安全向上のための研修及び原子力発電所の管理者・技術者等を10年で1000人規模で受け入れての安全管理に関する研修,又は原子力安全の専門家を旧ソ連,中・東欧諸国へ派遣するなど様々な事業を実施している。このような事業を通して,日本の原子力発電所における設計・建設から運転管理に至るまでの高い水準の安全確保体制が学ばれ,旧ソ連,中・東欧諸国の原子力施設の安全性の向上及びそれに携わる人々のセイフティ・カルチュアの醸成につながることが期待されている。
 また,我が国はロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄を防止するには,放射性廃棄物の貯蔵・処理問題の解決が不可欠であるとの観点から,一義的にはロシアが自ら解決すべき問題ではあるものの,政府としてもかかる問題の解決につき協力することとしている。これについては,日露核兵器廃棄支援委員会の資金の一部を利用し,液体放射性廃棄物処理施設の建設に協力しており,同施設は1996年(平成8年)1月,建設契約が署名され,現在,建設の最終段階にある。
 
*1 欧州復興開発銀行に設置された基金でブルガリア,リトアニア,ロシア及びウクライナを支援対象としている。