

原子力の開発利用を進めるに当たっては,安全の確保が大前捷です。原子力安全委員会の任務は,原子力基本法等に基づき,(1)安全確保のための規制政策,(2)核燃料物質及び原子炉の安全規制,(3)原子力の利用に伴う障害防止の基本等に関して企画し,審議し及び決定することにあり,行政庁はその決定を十分尊重することとなっています。このように我が国の原子力安全行政に対する原子力安全委員会に課せられた責務は重大であると考えています。
このため,原子力安全委員会は,原子力施設の基本設計段階で行政庁が行う設置許可等に関する安全審査について,最新の科学技術的知見に基づいて客観的立場から審査し.設置許可等の後の各段階における重要事項についても行政庁より報告を受け,審査しています。また,審査の客観性,合理性を高めるため,安全審査に用いられる指針類の整備及び一層の充実,設置許可等に関する安全審査について地元の意見を参酌する公開ヒアリングの開催,故障・トラブル等の原因究明と得られた教訓の安全確保対策への反映など.安全確保のための基盤となる重要な各種施策を推進しています。
1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震を受けて,原子力施設の耐震安全性の確認に万全を期すとの観点から,原子力安全委員会では,地震発生後直ちに「平成7年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会」を設置し.原子力施設の耐震設計に関する関連指針類の妥当性等について検討を行いました。その括果,“兵庫県南部地震を踏まえても,我が国の原子力施設の耐震安全性を確保する上で基本となる指針類の妥当性が損なわれるものではない”との結論を得たところです。しかしながら,原子力関係者は,今回の検討結果に安住することなく,原子力施設の耐震安全性について不断の努力を行い,なお一層の国民の信頼感の醸成に努めることが必要です。原子力安全委員会としても,耐震安全検討会の検討結果を踏まえつつ,今後とも耐震安全性の更なる向上に一層努力していく所存です。
1995年12月8日に発生した動力炉・核燃料開発事業団の高速増殖原型炉もんじゅのナトリウム漏えい事故については,2次主冷却系のナトリウムの漏えい事故であり,環境への放射能の影響はなかったものの,同事業団の事故後の対応等に不適切な点があり,地元の住民をはじめ多くの国民に不安感及び不信感を与える結果となったことは,原子力安全委員会としても誠に遺憾であります。原子力安全委員会では,今回の事故が高速増殖炉にとって重要なナトリウムに係るものであること等から,今回の事故を重視し,独自の立場から原因の究明及び再発防止対策等について調査蕃義を行うこととし,専門のワーキンググループを設置し,徹底した調査審議を行っているところです。本書では,1996年3月14日時点までの今回の事故に対する原子力安全委員会としての対応及び今後の調査審議の進め方等を紹介するとともに,今後結果がまとまり次第.これを公表し,原子力の安全に対する信頼の回復に全力で取り組んでいく所存です。
1996年度より,新安全研究年次計画(1996年度〜2000年度)に沿って耐震設計の一層の高度化を図るための調査研究等を始めとする原子力施設や環境放射能等に関する安全研究を着実に実施することとしています。
また,原子力安全委員会では,現状の低いリスクを一層低減し,安全性の一層の向上に資するとの観点から,1992年5月.原子炉設置者が自主的にシビアアクシデント対策を整備することを強く奨励したところですが,これを受け,1994年10月にはシビアアクシデント対策についての行政庁の検討結果が原子力安全委員会に報告されました。原子力安全委員会では,新たに設置した原子炉安全総合検討会において,これらシビアアクシデント対策の妥当性について検討を重ね,1995年12月にその妥当性を確認し,結果を公表したところです。今回の検討結果を踏まえ,引き続き,シビアアクシデント対策が着実に実施されることを奨励していく所存です。
さらに,運転年数が長期にわたる原子力発電所の増加が見込まれていることから,今後とも高経年化対策を進めていくことが重要と考えています。
以上のように,原子力安全委員会は,今後とも,原子力の安全確保のより一層の推進に最大限の努力を払っていく所存です。
本白書が原子力の安全確保に関する国民各位の理解を深める上で,一助となれば幸いです。
本書は,第1編,第2編,第3編及び資料編から構成されている。
第1編では,原子力安全委員会を中心とした安全規制機関における過去約1年間(1994年10月〜1995年12月)の活動,原子力施設全般に関する安全確保の現状を紹介している。
第2編では,「原子力施設の耐震安全性−平成7年兵庫県南部地震を踏まえて−」と題し,原子力施設における耐震安全性確保への取り組みと耐震安全検討会の検討の概要等を紹介している。
具体的には,まず原子力施設の基本設計における耐震安全性の確保の概要,耐震設計審査指針策定以前の原子力施設の耐震安全性等について紹介している。次に,「平成7年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会」における検討の概要を紹介している。さらに参考として原子力施設における耐震安全性の確保の現状を理解して頂くために必要な地震に関する基本事項等を紹介している。また,検討会の検討結果を含む原子力施設の耐震安全性に対して,一般の方々の理解の一助として,地元説明会等を通じて寄せられた主要な質問事項をQ&A形式で紹介している。
第3編では,1995年12月8日に発生した動力炉・核燃料開発事業団高速増殖原型炉もんじゅのナトリウム漏えい事故について,原子力安全委員会のこれまでの対応及び今後の調査審議の進め方等について紹介している。
資料編では,原子力安全委員会関係の各種資料,安全確保の実績に関する各種資料等を取りまとめている。
目 次
第1編 原子力の安全確保の現状
第1章 原子力安全委員会の活動
第1節 我が国の安全親制の概要
第2節 原子力安全委員会の活動
第2章 原子力施設等の安全規制を中心とした安全確保
第1節 実用発電用原子炉施設の安全規制
1 規制の概要
2 放射線被ばく管理
3 放射性廃棄物管理
4 規制活動の実績等
第2節 試験研究用及び研究開発段階にある原子炉施設の安全規制
1 規制の概要
2 放射線被ばく管理
3 放射性廃棄物管理
4 規制活動の実績等
第3節 原子炉施設に係るその他の活動等
1 原子炉施設の故障・トラブル等の評価尺度
2 原子炉の解体
3 原子炉主任技術者
4 安全性実証試験等
5 軽水炉技術の改良
第4節 核燃料施設の安全規制
1 規制の概要
2 放射線被ばく管理
3 放射性廃棄物管理
4 規制活動の実績等
第5節 放射性廃棄物の処理・処分における安全規制
1 規制の概要
2 処理・処分の現状
3 放射線被ばく管理
4 放射性廃棄物管理
5 規制活動の実績等
第6節 核燃料物質等の輸送における安全規制
1 規制の概要
2 輸送の現状
3 設計及び容器の承認
第7節 放射性同位元素等に係る安全規制
1 放射性同位元素等の取扱いに係る規制の概要
2 安全管理対策の実施等
第8節 放射線被ばくに係る線量基準等の整備
第3章 環境放射能調査
第1節 自然放射線に関する調査
第2節 放射性降下物等の放射能調査
1 放射性降下物等への対応
2 旧ソ連・ロシアの放射性廃棄物海洋投棄に係る対応
第3節 原子力施設周辺の放射能調査
第4節 原子力軍艦寄港に伴う寄港地沿岸及び周辺の放射能調査
第4章 原子力発電所等周辺の防災対策
第1節 我が国の防災体系
第2節 緊急技術助言組織の設置
第3節 中央防災会議の決定
第4節 原子力安全委員会の活動
第5節 関係行政機関等の対応
第5章 原子力の安全研究
第1節 原子力施設等に関する安全研究
第2節 環境放射能に関する安全研究
第3節 放射性廃棄物処分に関する安全研究
第6章 国際協力
第1節 多国間協力等
1 国際原子力機関(IAEA)
2 経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)
3 放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)
4 国際海事機関(IMO)
第2節 二国間協力
1 規制情報交換等
2 安全研究協力
第3節 海外の原子力安全の現状
1 世界の原子力発電所の現状
2 ロシアの原子力安全をめぐる動向
第2編 原子力施設の耐震安全性
−平成7年兵庫県南部地震を踏まえて−
はじめに
第1章 原子力施設における耐震安全性確保への取組
第1節 基本設計における耐震安全性の確保
1 基本設計段階における耐震安全性の確保の基本的な考え方
2 耐震設計の基本方針の確立の歴史と指針策定以前の耐震安全性の確認
3 耐震安全性の向上のための安全研究の推進
第2節 基本設計以降の段階における耐震安全性の確保
1 詳細設計における耐震安全性の確保(工事計画認可)
2 建設・施工時における耐震安全性の確保(使用前検査)
3 運転開始後における耐震安全性の確認(定期検査)
4 実証試験と安全解析
第2章 平成7年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設の耐震安全性の検討
第1節 耐震安全検討会における検討の基本方針
第2節 兵庫県南部地震の状況及び得られた知見
第3節 耐震設計に関する関連指針類の妥当性の検討
むすび
参考
用語集
Q&A
第3編 高速増殖原型炉もんじゅのナトリウム漏えい事故について
資 料 編