カラー口絵
はしがき
原子力安全委員会委員長
都甲泰正
原子力の開発利用を進めるに当たっては,安全の確保が大前提です。原子力安全委員会は,厳格な安全審査の実施,安全審査に用いる指針類の整備及び充実,地元の意見を参酌する公開ヒアリングの開催,故障・トラブル等の調査とその結果得られる教訓の安全確保対策への反映など,安全確保のための基盤となる重要な各種施策を推進しております。
原子力施設は,放射性物質を内蔵していることから,放射性物質の周辺環境への異常な放出を防ぐことが安全確保の基本となります。このため,原子力施設の設計,建設,運転等の各段階において設置者等による安全対策が講じられるとともに,国においても,例えば,原子力施設の基本設計段階では,行政庁がまず安全審査を行い,さらにその審査結果について原子力安全委員会が独自に客観的立場から審査を行うなど,厳格な安全規制が行われており,原子力の安全確保のための努力が着実に行われています。
また,原子力施設で故障・トラブル等が発生した場合には,徹底した原因究明を行い再発防止対策を講じており,そこから得られた教訓についても十分に反映することとしています。最近では,1991年2月に発生した美浜発電所2号炉事故等を教訓として,今後増加する高経年炉への対策等予防保全に一層徹することとしています。さらに,米国スリーマイルアイランド事故(TMI)事故及び旧ソ連チェルノブイル事故等を背景としたシビアアクシデントに関する国際的な研究の進展を受け,シビアアクシデント対策に関する今後の対応方針等を決定し,これに基づき具体的な検討が行われているところです。このように故障・トラブル等の発生そのものを未然に防止し,万一発生した場合においても,その拡大を防止するための措置を講ずるなど,安全確保上重要なものについては積極的に対処することとしております。
本年は,旧ソ連・ロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄問題に大きな関心が持たれました。これまでの調査では,我が国国民の健康に影響が及んでいるものではないことが確認されていますが,今後とも海洋環境放射能の調査に努め,影響の監視に万全を期すこととされております。
原子力施設からの排気又は排水中にも放射性物質は含まれますが,これらについては,従来より,一般公衆への被ばくの影響が法令に定められた基準を超えないことはもとより,合理的に達成できる限り低くとの考え方に基づき適切な処理がなされ,周辺公衆の安全が確保されております。原子力安全委員会においても,安全審査時に放出放射性物質による人体への影響について評価を行い安全であることを確認しており,運転開始後においても,原子力施設からの放射性物質の放出に際してはモニタリング等による厳重な監視が行われ,安全が十分に確保されています。
末尾になりますが,私は,本年2月16日に原子力安全委員会委員長に就任いたしました。初代吹田委員長,二代目御園生委員長,三代目内田委員長のあとを受け,本委員会の長として責任の重さを改めて認識するとともに,これまで培われてきた安全確保の実績を今後とも着実に積み重ねることにより,安全性のより一層の向上に努めるよう決意を新たにしているところであります。
原子力安全委員会は,今後とも,原子力の安全確保のより一層の推進に最大限の努力を払って参る所存でありますが,本書が原子力の安全確保に関する国民各位の理解を深める上で,一助となることが出来れば幸いであります。
1993年11月
本書の構成と内容
本書は第3編構成であり,第1編では,原子力安全委員会を中心とした安全規制機関における過去約1年間の活動,原子力施設全般に関する安全確保関連施策の現状等を紹介しております。
第2編では,「発電用原子炉施設におけるプルトニウム利用に係る安全確保」と題し,核燃料サイクルの中で生成されたプルトニウムを原子炉で利用するに当たっての安全確保について説明しております。具体的には,まず,発電用原子炉施設の安全確保の概要について軽水炉を例に説明し,また,原子炉でプルトニウム燃料を利用する場合の安全確保の考え方を説明しております。次に,高速増殖炉,新型転換炉及び軽水炉におけるプルトニウム燃料の利用に関し,各々の炉に特有の事項を中心に安全確保の考え方を説明し,さらに,それを確認するための安全規制の概要について,安全審査を中心に説明しております。
なお,第2編の末尾に,本年1年を振り返り社会的に関心の高かった事項について,Q&Aの形で説明しております。
資料編では,原子力安全委員会関係の各種資料,安全確保の実績に関する各種資料等を取りまとめております。
目 次
第1編 原子力の安全確保関連施策の現状
第2章 原子力施設等の安全規制及び安全確保
1 安全規制の概要
2 運転管理
3 放射線被ばく管理
4 放射性廃棄物管理
5 安全確保に係る活動実績等
1 安全規側の概要
2 運転管理
3 放射線被ばく管理
4 放射性廃棄物管理
5 原子炉の解体
6 安全確保に係る活動実績等
1 安全規制の概要
2 運転管理
3 放射線被ばく管理
4 放射性廃棄物管理
5 安全確保に係る活動実績等
1 安全規制の概要
2 処理処分の現状
3 安全確保に係る活動実績等
1 安全規制の概要
2 輸送の現状
3 設計及び容器の承認
4 輸送の安全基準等の整備
1 放射性同位元素等の取扱いに係る安全規制
2 安全管理対策の実施等
3 線量基準等の整備
第3章 環境放射能調査
1 放射性降下物等への対応
2 旧ソ連・ロシアの放射性廃棄物海洋投棄に係る対応
第4章 原子力発電所等周辺の防災対策
1 我が国の防災体系
2 緊急技術助言組織の設置
3 中央防災会議の決定
4 原子力安全委員会原子力発電所等周辺防災対策専門部会等の活動
5 関係行政機関等の対応
第5章 原子力の安全研究等
1 低レベル放射性廃棄物処分の安全研究
2 高レベル放射性廃棄物等の処分の安全研究
第6章 国際協力
1 国際原子力機関(IAEA)
2 経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)
3 放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)
4 国際海事機関(IMO)
1 規制情報交換等
2 安全研究協力
1 世界の原子力安全の現状
2 ロシアの原子力安全をめぐる動向
3 旧ソ連型原子炉の安全問題及び我が国の支援政策
第2編 発電用原子炉施設におけるプルトニウム利用に係る安全確保
第1章 発電用原子炉施設の安全確保の概要(総論)
1 平常運転時の放出放射性物質の低減化
2 多重防護の考え方による安全対策
3 周辺公衆からの離隔
1 安全規制の概要
2 安全審査の概要
1 プルトニウムの性質
2 プルトニウムの人体への影響
3 プルトニウム燃料を利用する場合の安全確保の考え方
第2章 高速増殖炉の安全確保
1 高速増殖炉の現状
2 高速増殖炉の構造
1 高速増殖炉の安全確保の考え方
2 高速増殖炉の安全規制
3 原子炉設置許可以降の段階における重要事項について
4 海外の高速増殖炉におけるトラブル等と我が国への反映
第3章 新型転換炉の安全確保
1 新型転換炉の現状
2 新型転換炉の横造
1 新型転換炉の安全確保の考え方
2 新型転換炉の安全規制
3 原子炉設置許可以降の段階における重要事項について
4 新型転換炉実証炉の安全性の評価の考え方
第4章 軽水炉によるプルトニウム利用の安全確保
1 軽水炉によるプルトニウム利用の現状
2 我が国におけるMOX燃料の小数体規模での実証計画の概要
1 軽水炉によるプルトニウム利用の安全確保の考え方及び安全審査
2 今後の軽水炉によるプルトニウム利用と安全審査
資料編