(付録)

 原子力安全委員会では,厳格な安全審査を行うなど安全確保に努めるほか,国民と十分な意志の疎通を図り,国民の意見を原子力安全行政に反映させ,原子力の安全性についての理解と信頼を増進するよう努めてきたところです。

 ここでは,本年1年を振り返り,社会的に関心の高かった質問に対し,昨年と同様にQ&Aの形で説明を加えることとしました。このQ&Aが原子力の安全性についての理解を一層深めていただく上で一助となることを期待します。




問1 1991年2月に発生した美浜発電所2号炉事故からの教訓事項は原子力発電所の安全確保対策にどのように反映されているのですか。

答1.1991年2月に美浜発電所2号炉で発生した蒸気発生器伝熱管破損事故は,伝熱管の異常な振動を抑えるための振止め金具が設計どおりに製作,挿入されていなかったこと,及びそのような状態が長期間にわたり認知できなかったことが原因でした。

 2.原子力の安全確保の基本は,放射性物質の異常な放出による周辺環境への影響を防ぐことです。本事故では,安全審査において評価された安全機能が大筋において適切に働いたため,放射性物質の異常な放出が防がれ,安全は基本的に確保されました。
 しかしながら,原子力の安全確保においては,このような安全確保の基本はもとより,製作,施工,運転,保守管理において細心の注意を払い,事故・故障・トラブルの発生そのものを極力防止すること,すなわち予防保全に徹することにより高い信頼性を確保することが重要です。
 したがって,原子力安全委員会は,安全上重要な原子炉冷却材圧力バウンダリを構成している蒸気発生器伝熱管が破断するという事故が発生したことを,予防保全の観点から重大なものと受け止めました。

 3.このため,所管行政庁である通商産業省が調査を行う一方,原子力安全委員会においても,事故後直ちに下部機関である原子炉安全専門審査会にワーキンググループを設置して,通商産業省からの報告も踏まえ独自の立場から調査審議を実施しました。

 4.原子力安全委員会は,この調査審議結果を1992年3月9日に取りまとめました。そこでは,安全審査に関し,直ちに変更を必要とする事項は見出されなかったとしつつ,今後の原子力の安全確保の一層の推進のため,

 ○技術の進歩と経験の蓄積に応じ,継続的に安全審査における指針等について検討すべき,

 ○既設の施設に対し技術の進歩等を適切に反映する方策を検討すべき,

 ○高経年炉の増加に対応し施設の維持基準,定期検査項目等を適切に見直すべき,

 ○蒸気発生器の基準の体系的な検討に着手すべき,

 ○安全研究を一層推進すべき,

 と提言をしました。

 5.これを受け,まず,指針等の検討については,原子力安全委員会は1992年5月から下部機関である原子炉安全基準専門部会において検討を行っています。
 また,予防保全対策の充実の観点から,通商産業省において,1992年5月に「総合的予防保全対策の推進について」として,定期安全レビュー,高経年化対策等への取組が発表されました。その後,既設の施設に対する技術の進歩等の適切な反映のため,同年6月に定期安全レビュー制度を導入することについて各電気事業者に通商産業省から通知がなされました。一方,高経年化対策の具体化については,引き続き通商産業省において検討が行われています。
 さらに,蒸気発生器に関する基準については,通商産業省において,既に1992年6月に伝熱管の構造に関する技術基準が整備されるとともに,体系的整備については,引き続き検討が行われています。
 なお,振止め金具については,ステンレス鋼の改良型振止め金具に順次交換されています。

6.以上のように,美浜2号炉事故から原子力安全委員会が摘出した教訓事項は着実に実施されつつあります。今後,原子力安全委員会における検討を引き続き進めるとともに,通商産業省における教訓事項等の実施状況について,適宜報告を受け確認をしていくこととしています。




問2 1992年9月に福島第一原子力発電所2号炉でECCSが作動しましたが,安全性に問題はないのですか。

答1.福島第一原子力発電所2号炉においては,定格出力(78.4万kW)で運転中,1992年9月29日,原子炉水位の低下により原子炉が自働停止し,その後,低下した原子炉水位を回復させるため,原子炉隔離時冷却系及び非常用炉心冷却系(ECCS)の一つである高圧注水系が作動しました。
 これらの機器が設計上期待されたとおりに作動したことにより,プラントは安全な状態で停止し,水位は回復するとともに,周辺環境への放射性物質の影響はなく,安全上問題はありませんでした。

 2.福島第一原子力発電所2号炉は沸騰水型軽水炉(BWR)と呼ばれ,原子炉で発生した蒸気がタービンを回し,その蒸気は復水器で海水によって冷却されて水となり,再び原子炉に戻される仕組みとなっています。今回のトラブルは,復水器と原子炉の途中にある高圧復水ポンプで作業員の作業ミスにより誤信号が発信し,運転中の高圧復水ポンプが停止してしまったために起こったものです。

 3.原子力安全委員会は,今回のトラブルの原因となった作業員のミス,いわゆるヒューマンエラー対策の充実が同様のトラブルの再発防止対策として重要であると考え,トラブル発生後通商産業省よりトラブルの概要等について報告を受けた際,ヒューマンエラー対策等を中心に再発防止対策を十分検討するよう通商産業省に指示しました。
 その後,通産産業省において再発防止対策等について検討が行われ,1992年10月29日には,以下のような再発防止対策が取りまとめられ,電気事業者に対して指示が行われました。原子力安全委員会は,同日,本件について通商産業省から報告受け,了承しました。

 〇ヒューマンエラー防止の徹底

 ・プラントの運転に対して影響を与え得る作業を実施する場合には,その作業がプラントの運転に対して与え得る影響について評価を行う。

 ・プラントの運転に対して影響を与え得る作業を実施する場合には,その影響や作業手順を確認・整理し,事前に作業手順書等を整備した上で作業する。

 ・誤操作防止対策を充実する  等

 ○給復水系ポンプの健全性保護を妨げることなく,連鎖的に給復水系ポンプが停止し全給水流量喪失の事態に至らぬよう,給復水系ポンプのインターロックの見直しを計画的に行う。

 等。

 4.なお,我が国のBWRについては,その設置に係る安全審査において,原子炉への給水流量が全て喪失する事象の発生を想定し,その場合でも炉心の健全性は確保されることを確認しています。




問3 蒸気発生器の父換については,どのような安全審査が行われたのですか。

答1.蒸気発生器の交換については,これまで,関西電力(株)から大飯発電所1号炉,高浜発電所2号炉及び美浜発電所2号炉について,九州電力(株)から玄海原子力発電所1号炉について,合計4件の設置変更許可申請がなされ,原子力安全委員会のダブルチェックを経て許可がなされています。

 2.原子力安全委員会においては,蒸気発生器の交換及び取り外した蒸気発生器を保管するための保管庫の設置の安全性について審査するとともに,1991年2月に発生した美浜2号炉事故に係る通商産業省における調査の結果得られた,例えば以下のような教訓事項等が適切に反映されていることを確認しました。

 ○交換用の新しい蒸気発生器では,広熱管の振止め金具が伝熱管との接触条件を考慮したステンレス鋼の3本組が用いられ,また,伝熱管と管支持板との隙間部で不純物が濃縮されるのを防止するために管支持板の穴の形状を四つ葉型としたものが用いられ,従来よりも一層使用環境条件に適合できるように設計・製作される。

 ○蒸気発生器伝熱管の1次側(原子炉からの高温高圧の水が流れている側)から2次側(タービンを回す蒸気が発生する側)への漏えいをより迅速かつ確実に検出できるよう,高感度型主蒸気管モニタ(窒素16モニタ)が主蒸気管に設置される。

 3.なお,美浜2号炉事故の発生を踏まえ,これら4つの原子力発電所以外の原子力発電所についても蒸気発生器の父換を勧告すべきではないか,とのご指摘もあります。しかしながら,

 ○蒸気発生器については,伝熱管の補修等に伴う施栓率の増加を見込んだ安全解析を行っており,伝熱管の損傷が発生しても,施栓等の適切な補修を行えば安全上問題はないこと,

 ○美浜2号炉事故は振止め金具の挿入不完全が原因として起こったものであり,現在では,他の原子力発電所において設計どおり振止め金具が製作,挿入されていることが確認されていること,

 から,同種の事故の再発防止対策として蒸気発生器の交換を勧告する必要はないと考えています。美浜2号炉以外の3件の蒸気発生器の交換も,伝熱管の補修等に伴う定期検査の期間,従業員被ばくの増加,補修費用の増大,設備利用率の低下等を考慮し,電気事業者が自らの判断で蒸気発生器の交換を実施することを決めたものです。




問4 我が国の原子力発電所ではシビアアクシデントは起こらないのですか。

答1.シビアアクシデントとは,「設計基準事象を大幅に超える事象であって,安全設計の評価上想定された手段では適切な炉心の冷却又は反応度の制御ができない状態となり,その結果,炉心の重大な損傷に至る事象」をいいます。また,設計基準事象とは,「原子炉施設を異常な状態に導く可能性のある事象のうち,原子炉施設の安心設計とその評価に半たって考慮すべきものとして抽出された事象」をいいます。

 2.シビアアクシデントについては,米国スリーマイルアイランド原子力発電所事故(1979年3月),旧ソ連チェルノブイル原子力発電所事故(1986年4月)を契機として内外で研究,検討が進展しています。このような状況を踏まえ,原子力安全委員会としても,下部機関である原子炉安全基準部会において検討を行い,1992年3月に同部会において報告書が取りまとめられました。これを受け,原子力安全委員会は,同年5月28日,我が国の代表的な原子力発電所である軽水炉を対象とし,シビアアクシデントに対する見解と今後のシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについての取組み方針を取りまとめました。その内容は以下のとおりです。

 @我が国においては,原子力発電所の安全確保に関し,設計,建設,運転等の各段階において,異常の発生防止,異常の拡大防止及び事故の影響緩和といういわゆる多重防護の思想に基づき,様々な安全確保対策が講じられている。これらによって,シビアアクシデントは工学的には現実に起こることは考えられないほど発生の可能性は十分小さいものとなっている。

 Aしかしながら,より一層の安全性の向上を図るとの側点から,電気事業者が効果的なアクシデントマネージメント(シビアアクシデントへの拡大防止対策及びシビアアクシデントに至った場合の影響緩和対策)を自主的に整備し,万一の場合にこれを的確に実施できるようにすることは強く奨励されるべきである。

 3.この原子力安全委員会における決定を受け,通商産業省においてアクシデントマネージメントの具体化について検討が行われ,1992年7月には,今後のアクシデントマネージメントに係る具体的な対応方策が取りまとめられました。

 4.原子力安全委員会としては,これに従って行われる各原子力発電所のPSA(Probabilistic Safety Assessment:確率論的安全評価)の結果及びそれを踏まえたアクシデントマネージメントの実施方針(設備上の具体策,手順書の整備,要員の教育訓練等)について通商産業省から報告を受け,検討を行うこととしています。




問5 旧ソ連型の原子力発電所の安全性に不安があると言われていますが,どういうことなのですか。

答1.旧ソ連,中・東欧諸国では,1992年8月現在,合わせて57基の旧ソ連製原子炉が運転されています。このうち,黒鉛減速軽水冷却型炉(RBMK型炉)が15基,旧ソ連製加圧水型軽水炉(VVER型炉)が42基です。VVER型灯は旧ソ連が開発し,中・東欧圏にも輸出されている加圧水型軽水炉であり,開発された年代順に3タイプ(VVER440/230,VVER440/213,VVER1000)に分けることができます。
 この中で最も古いタイプのVVER440/230型炉,そしてRBMK型炉の合計25基の安全性が特に問題とされています。

 2.すなわち,1989年11月の東西両独統一後,旧西独の原子炉安全研究協会(GRS)によって旧東独にあったVVER型炉の安全評価が実施され,その結果,中・東欧で運転中の旧ソ連製原子炉のうち旧型炉(VVER440/230型炉)の安全問題が顕在化しました。
 このような状況の中で国際原子力機関(IAEA)は,旧ソ連,中・東欧諸国の原子力安全問題については国際的にその対応策をとることが緊急の課題であるとし,安全評価プロジェクトを実施することとしました。この他にも,欧州共同体委員会(CEC)等の国際機関,2国間においてもいくつかの支援プロジェクトが計画されています。

 3.VVER440/230型炉について,IAEAは,1990年9月より安全評価プロジェクトを開始し,各国の専門家により構成される安全評価ミッションを発電所へ派遣し,設計,運転,保守の各向からの評価を実施しています。その結果,西側の軽水炉と比較すると,格納容器かない,原子炉容器の中性子脆化の進展のほか,緊急炉心冷却能力,防火対策,運転員の訓練,緊急時マニュアルの整備が十分でない等の問題が指摘されました。

 4.さらにVVER440/230型炉以外のVVER440/213型炉,VVER1000型炉及びRBMK型炉についても,IAEAは同様の安全評価プロジェクトを開始することとしています。

 5.一方,1992年7月に開催されたG7ミュンヘンサミットにおいて,旧ソ連,中・東欧諸国における原子力発電所の安全性を高めるための支援計画が議論され,行動計画として,緊急を要する修繕措置,原子力発電所の逆転・保守面での安全性向上策,規制体制の整備の3分野について短期的に実施すべき支援策のほか,本格的な改修工事と代替ネルギー源の確保など中・長期的に実施すべき支援策がそれぞれ盛り込まれ,現在その共体化が図られているところです。




間6 フランスでスーパーフェニックスの運転再開が見合わされることとなりましたが,我が国の高速増殖炉「もんじゅ」の安全性に問題はないのですか。

答1.フランスのスーパーフェニックス(電気出力124万kW)は,商用発電を目指した出力規模での高速炉の性能を実証することを目的とする高速増殖炉実証炉です。1985年9月に初臨界し,1986年12月には全出力運転を達成しました。しかし,1987年3月には使用済燃料の貯蔵を行うことが予定されていた炉外燃料貯蔵槽でナトリウムの漏えいが発生し,さらに1次冷却材中への空気混入等の原因で1990年7月から逆転が停止されていました。

 2.スーパーフェニックスの運転再開について審査していたフランスの原子力施設安全品(DSIN)は,技術的な検討の結果,出力及び運転期間を制限して運転再開を認める報告書を1992年6月に環境大臣と産業貿易大臣に提出していました。しかし,政府内部で調整された結果,同年6月29日,フランスのベレボゴワ首相は,万一のナトリウム漏えい時のナトリウム燃焼への対策をとることなどを求め,スーパーフェニックスの運転再開を見送るコミュニケを発表しました。

 3.一方,我が国の高速増殖原型炉「もんじゅ」(電気出力28万kW)は,その設計,建設,運転の経験を通じて発電プラントとしての高速増殖炉の性能,信頼性を技術的に確認するとともに,経済性についても検討,評価を行うため,動力炉・核燃料開発事業団が建設を進めているものです。1983年5月に内閣総理大臣から原子炉設置許可がなされており,1993年には初臨界を迎える予定です。

 4.「もんじゅ」は,高速実験炉「常陽」の運転経験や大洗工学センターでの研究開発成果等を踏まえつつ安全の確保が図られており,その安全性については原子力安全委員会としても確認しているところです。「もんじゅ」とスーパーフェニックスとでは炉型,出力,設計の考え方等が異なっており,フランスの規制当局がスーパーフェニックスに関して示した見解をそのまま「もんじゅ」にあてはめるのは適当ではないと考えています。
 例えば,ベレボゴワ首相が指摘したナトリウム火災に対する措置についても,「もんじゅ」においては格納容器内のナトリウムを内包する機器,配管はすべて窒素雰囲気中にあり,万一格納容器内で配管からナトリウムが漏えいしても,燃焼を抑制する設計となっています。

5.「もんじゅ」については,我が国の法令,安全審査指針等に基づき,厳格な安全審査を実施してきており,「もんじゅ」の安全性に問題はないと考えています。

 なお,「もんじゅ」については,今後も法令に基づき行政庁により厳正な安全規制が実施され,安全確保に万全が期されます。




問7 「もんじゅ」行政訴訟に関する最高裁判決との関連で現在の原子力防災対策を見直す必要はないのですか。

答1.「もんじゅ」の行政訴訟は,1985年9月26日に福井県内の住民が「もんじゅの原子炉設置許可処分は無効である」として提訴していたもので,これまで原告適格(訴訟する法的資格)に関する法律論について争われてきましたが,1992年9月22日,最高裁が原告に原告適格を認める内容の判決を下したものです。

 2.この最高裁判決は,原告適格に関する法律論についてのものですが,その判決理由の中で,当該原子炉から原告の居住地までの距離(約58km内)が取り上げられたことにより,現行の原子力防災対策との関連が注目されているものです。

 3.原子力防災に関しては,原子力災害特有の事象に着目して,原子力発電所等の周辺における防災活動のより円滑な実施が行えるように,原子力安全委員会において技術的,専門的事項について検討し,「原子力発電所等の周辺の防災対策について」(1980年6月決定)として取りまとめています。

 4.その中に記載してあるように,原子力発電所等において異常事態が発生してから住民の居住地域に影響が及ぶまでの時間を有効に活用して,周辺住民の被ばくを低減するための応急措置を適切に行うためには,あらかじめある地域の範囲を選定し,そこに重点を置いた原子力防災に特有な対策を講じておくことが必要であると考えています。

 5.その重点地域の範囲としては,我が国の原子力施設の状況に対する事故の可能性,規模等の技術的側面に加え,人口分布,行政区画,災害応急対策実施上の実効性等を総合的に検討した結果,原子力発電所等を中心として約8〜10kmの距離をめやすとすることを提案しています。

 6.一方,「もんじゅ」訴訟における最高裁判決は,設置許可処分に対する無効確認訴訟の原告適格に関する法律論について述べたものであり,原子力防災の重点地域とは直接比較できるものではなく,現行の原子力防災対策は妥当なものと考えております。




問8 1992年10月の伊方発電所1号炉,福島第二原子力発電所1号炉の設置許可可処分に係る最高裁判決について,どのように考えていますか。

答1.これらの原子力発電所の設置許可処分に係る行政訴訟は,原子炉の設置許可処分の取り消しを求めて,伊方発電所1号炉については1973年8月に,福島第二原子力発電所1号炉については1975年1月に,それぞれ提訴されていたものです。

 2.1992年10月29日,最高裁において,原子力委員会(設置許可当時は原子力安全委員会の設立前であった)等における調査審議及び判断に不合理な点があるとはいえず,これを基にしてされた原子炉設置許可処分は適法であるとした控訴審の判断を正当として是認し,原告の上告を棄却する判決を言い渡しました。

 3.原子力安全委員会はこれらの訴訟の当事者ではありませんが,これまで行ってきた安全審査の過程の正当性が評価されたという点で,意義深いものと考えています。

 4.いずれにせよ,原子力安全委員会としては,今後とも安全の確保に万全を期していく所存です。




問9 プルトニウムはどのような性質を持ったものなのですか。

答1.プルトニウムは原子番号94の人工元素で,質量数が238,239,240,241,242,などの同位体があります。核燃料物質としてよく知られているブルトこウム239は,原子炉内でウラン238が中性子を吸収して生成するアルファ放射性核種(半減期約2万4千年)です。

 2.プルトニウムから放出されるアルファ線は空気中でも約4cmの飛程しかなく,比較的簡単に遮へいが可能です。したがって,プルトニウムの人体への影響が問題となるのは,体外被ばくよりもプルトニウムが体内に入った場合の体内被ばくによる影響です。

 3.プルトニウムが呼吸により体内に摂取された場合,肺にしばらくとどまるとともに,血液を介して主に骨,肝臓に集まることが知られています。このため,プルトニウムを取り扱う再処理のような施設の安全性を評価する際には,プルトニウムの放出を伴う事故の発生を仮想しても,肺,骨及び肝臓に注目し,これらにおける有意な発がんが認められないように判断基準のめやすが設定されています。

 4.また,これまで国際機関で示された許容量以上のプルトニウムを事故によって人が吸入した例がいくつかありますが,プルトニウムに由来すると考えられる有害な健康影響が医学的に確かめられている例はこれまでのところありません。




間10 プルトニウムの海上輸送の安全性ほどのように確保されているのですか。

答1.核燃料物質等の輸送に関しては,IAEA(国際原子力機関)が国際基準「放射性物質安全輸送規則」を定めており,我が国を含め各国ともこの規則に準拠して輸送の安全規制を実施しています。

 2.この規則においては,プルトニウムを含む核燃料物質等の輸送に関し,輸送容器の形状や強度及び輸送容器近傍の放射線の強さの限度等,さらに輸送容器の積載方法などについて詳細に規定されています。

 3.プルトニウムの海上輸送に当たっては,この規則に基づき,B型核分裂性輸送物としての厳しい基準が適用されます。具体的には,9mの高さからの落下試験,800℃の環境に30分間置く耐火試験,水深15mに8時間置く浸漬試験等に合格した丈夫な輸送容器を用いることが要求されることになります。
 なお,平常時においては,輸送容器の遮へい効果が高いため,表面の線量当量率は極めて低く,安全上問題はありません。

 4.一方,本年秋のプルトニウムの海上輸送に当たっては,排水量約5千トン,全長約100mですべて鋼鉄溶接により建造された専用船が用いられます。
 まず,船舶が沈没するような衝突時の事故を避けるため,衛星航法装置,自動衝突予防援助装置等の最新型の航行装置が備えられています。
 また,船体は耐衝突構造を施した二重船殻構造を持ち,衝突や座礁にも耐えられるようになっていますが,仮に海水が船倉に入るような損傷であっても,浮力を保持する高い安定性を有するなど,極めて沈没しにくい構造となっています。
 さらに,船体は不燃性の材料が使用されているとともに,火災探知装置が装備されます。加えて,輸送容器は可燃性のものがほとんどない船倉に積載されるとともに,火災発生時に船倉内に水を張るための設備を含めた消火設備など,万全の装備がされています。

 5.これらの輸送容器と輸送船の安全対策があいまって,プルトニウムの海上輸送の安全性は十分に確保されています。

 6.なお,科学技術庁では,法律上要求されているわけではありませんが,念のために,今回の輸送に使用される輸送容器の耐圧試験を実施しています。その結果,輸送容器が海没するという事態を仮想しても,水深1万mに相当する圧力下においてその密封性能が健全であることが確認されています。また,輸送容器が海没し,収納した核物質の全量が海水中に漏えいしたと仮想した場合の環境影響評価として,一般公衆の被ばく線量の評価に係るケース・スタディを行い,その結果,環境に対する影響は小さいと評価されています。

 7.さらに,輸送中の核物質については,施設内にある場合よりも不法行為等に対しては脆弱性を有するものであることから,公共の安全を確保するため,国際的にも十分な防護措置を講じるべきものとされています。これを踏まえ,今回の輸送に当たっても,万全の防護措置を講じるとともに,その実効性を確保するため詳細な輸送情報の取扱いに慎重を期することとされています。




問11 原子力船「むつ」の解体に係る安全性はどのように確保されるのですか。

答1.原子力船「むつ」は,1985年3月に政府が定めた基本計画に基づき,1992年2月に原子炉の運転を終了し,同年8月3日に日本原子力研究所から,原子炉等規制法に基づき,原子力船「むつ」の解体についての解体届が,また,解体した原子炉室等を保管する建屋の新設についての原子炉設置変更許可申請がなされています。

 2.この解体届によると,全工程を3段階に分け,第1段階においては原子炉容器から燃料体の取出し等を,第2段階においては原子炉補機室等の機器類撤去を,第3段階においては原子炉室の撤去を実施することとなっており,1995年度には原子炉室を一括して保管建屋に移設する計画となっています。

 3.「むつ」の解体等に係る安全性については,解体届に基づいて,基本方針及び第1段階の解体計画が安全に解体が行い得る計画となっている旨の報告を科学技術庁から受け,原子力安全委員会としても了承したところです。また,日本原子力研究所は1992年9月18日に解体工事に着手しましたが,科学技術庁は,実際の工事に当たり,内容の詳細及び進歩状況を逐次把握し,適宜解体に際して職員を立ち合わせるなどの措置等により,「むつ」の解体が安全に行われるよう指導していくこととしています。
 なお,原子力安全委員会は,第2段階及び第3段階の解体着手に先立ち,各段階の解体の安全性に対する科学技術庁の検討結果について報告を受け審議することとしています。

 4.また,保管建屋の新設に係る原子炉設置変更許可申請については,科学技術庁における審査が終了し,1992年10月に内閣総理大臣から原子力安全委員会に諮問がなされました。現在,原子力安全委員会の下部機関である原子炉安全専門審査会において調査審議を行っているところ(1992年11月1日現在)ですが,厳格なダブルチェックを行い,安全確保に万全を期することとしています。