第2節 自然放射線に関する調査
われわれが生活している環境には,たえず地球上にふりそそいでいる宇宙線や天然に存在する放射性物質からの放射線などの自然放射線がある。環境放射線による被ばくのうち,大部分は自然放射線による寄与であり,これは,地質の違いによる地域差もあり,このレベルを把握することは国民線量を推定,評価する上で重要である。
我が国の自然放射線に関する調査は,放射線医学総合研究所において昭和42年度から52年度にかけて,日本全国にわたる第1次現地測定が行われた。この調査は,現在もさらに測定が継続されており内容の充実が図られている。
また,昭和57年国連科学委員会の報告書でラドン及び娘核種によるリスクが高いとの報告がなされたことを機会に,先進諸国でラドンによる被ばく線量の本格的調査が行われるようになった。このため,我が国も科学技術庁放射線医学総合研究所において,昭和58年度より測定手法の開発を進めるとともに,特定の地域においてラドン濃度の実測が行われている。
平成2年7月21日に岡山県にある酸化チタン工場からの廃棄物を搬入している産業廃棄物処分場から通常より高いレベルの放射線が検出された問題については,岡山県以外の同種工場も含めて,それぞれの工場,廃棄物処分場の所在する地方公共団体において放射線測定及びその結果に基づく立ち入り制限等緊急的な措置が実施された。
地方公共団体の放射線測定の結果,鉱石置き場等一部の場所では通常より高い放射線が検出されたものの,工場,処分場の敷地境界ではほぼバックグラウンドレベル程度であった。また,岡山県が採取した鉱石,廃棄物等の試料について(財)日本分析センターにおいて核種分析を実施したところ,徴量のウラン,トリウム等が含まれていることが判明した。
この問題については,関係省庁で協議して,平成2年9月7日に,@当面の措置の実施,A最終的措置の検討を行うことを柱とする「チタン鉱石問題に関する基本的対応方針」を取りまとめ,関係地方公共団体,企業に対し通知した。
その後,鉱石から産業物へのウラン等の移行状況調査,全国の関係する廃棄物処分場においてボーリング調査による試料採取,排水の放射能濃度測定,ラドン濃度測定等詳細な調査を行い,その結果を基に工場・処分場での一般公衆,従業員の安全評価を行うとともに,各処分場で一般的な跡地利用を考えた7つのモデルで安全評価を行ったところ,原子力施設に適用されている一般公衆の年実効線量当量限度であるlmSv以下であり,安全性は確保されていることが分かった。
これらの結果を踏まえ,関係省庁と協議した結果,平成3年6月6日に今後とも十分安全性を維持していくため,@定期的に空間放射線量率等の測定を実施する,Aチタン工場外に持ち出す廃棄物に起因する空間放射線量率は0.14μGy/h以下とする,B過去の処分場で大規模な跡地利用を行う際には事前に国に通知すること等を盛り込んだ「チタン鉱石問題に関する対応方針」を取りまとめ,関係地方公共団体,企業に対し,この方針に基づいた対応を採るよう通知した。