は し が き
ソ連のチェルノブイル原子力発電所4号炉の事故以来,国際的に原子力の安全に対する関心が高まっています。我が国でも,昭和63年1月に発表された総理府調査で示されているように,原子力利用の必要性に対する支持は約57%であるにもかかわらず原子力の安全性に何らかの不安を持つ人の割合は約86%に達しています。特に本年は,伊方発電所出力調整運転試験を契機に,国民的関心の高まりがみられました。
原子力安全委員会は,昭和49年の原子力船「むつ」放射線漏れ以降における原子力推進に対する国民的批判に対応し原子力安全規制体制が見直された結果,昭和53年秋に発足しました。原子力の利用を進めるに当たっては,原子力基本法の基本方針でも述べられているとおり,安全の確保が大前提であります。さらに,原子力安全委員会の設立の背景及び原子力安全委員会の折々の決定として公表されたところからも明らかなとおり,原子力の安全性に対する国民の十分な理解と信頼を得ることが不可欠であります。このため,原子力安全委員会は,発足以来,原子力施設の設置許可の際の厳正な安全審査の実施,この安全審査の客観性,合理性を高めるための指針類の整備,国民,特に設置される予定の地域住民の意見を規制行政に参酌するための公開ヒアリングの開催,常に最新の知見を踏まえて安全規制を実施するための安全研究の推進など,我が国の原子力安全規制行政の「かなめ」という認識の下に努力を重ねてまいりました。
原子力安全委員会は,その発足以来,本年をもって10年の年月を重ねたことになります。原子力の安全性に関する国民的関心の高まりに対応して,原子力安全委員会が,過去10年間どのような活動を行い,今後の課題として,今何に取り組んでいるかをとりまとめて国民の皆様に紹介することは,原子力の安全性について国民の方々の理解と信頼をより深めていくうえで,意義深いと考えます。
このため,本年報の第1編では,原子力安全委員会が発足して現在に至るまでの10年間における原子力の安全確保のための活動等について概説しました。
また,第2編においては,原子力発電所や核燃料施設など原子力施設全体に関する安全確保施策の現状を紹介しております。
原子力安全委員会は,今後とも,原子力の安全確保に万全を期していくため,所要の施策の推進に全力を挙げて取り組んでいく所存でありますが,本年報が,原子力の安全確保に関する国民各位の理解を深めるうえで,一助となることができれば幸であります。
昭利63年10月
目 次
第1編 原子力安全 ―この10年・これからの10年―
第1章 この10年の歩み
1 安全規制体制の再編
2 安全委員会の活動の基本方針
1 指針の整備
2 安全委員会による安全審査
3 公開ヒアリング等
1 故障・トラブル等の減少と設備利用率の向上
2 放射性廃棄物管理の状況
3 従事者の被ばく状況
第2章 これからの10年
1 再処理施設
2 低レベル放射性廃棄物処理処分
3 高レベル放射性廃棄物処理処分等
4 プルトニウムの航空輸送
1 国際機関及び各国の動向
2 我が国における調査審議の状況
1 経年劣化
2 原子炉施設の廃止措置
第2編 原子力の安全確保関連施策の現状
第1章 原子力施設等の安全規制及び安全確保
第1節 実用発電用原子炉施設
1 安全規制の概要
2 許認可,検査等
3 運転管理
4 指針等の整備
5 放射線被ばく管理
6 放射性廃棄物管理
7 原子炉の解体
1 安全規制の概要
2 許認可,検査等
3 指針等の整備
4 運転管理等
5 放射線被ばく管理
6 放射性廃棄物管理
1 安全規制の概要
2 輸送の現状
3 設計及び容器の承認
4 輸送の安全基準等の整備
1 放射性同位元素等の取扱いに係る安全規制
2 線量基準等の整備
3 安全管理対策の実施等
第2章 放射性廃棄物の処理処分
1 原子炉等規制法による規制
2 障害防止法による規制
1 高レベル放射性廃棄物
2 低レベル放射性廃棄物
第3章 環境放射能調査
第4章 原子力発電所等周辺の防災対策
1 我が国の防災対策
2 緊急技術助言組織の設置
3 中央防災会議の決定
4 安全委員会原子力発電所等周辺防災対策専門部会等の活動
5 関係行政庁等の対応
第5章 原子力の安全研究等
1 低レベル放射性廃棄物処分の安全研究
2 高レベル放射性廃棄物等の処分の安全研究
1 概要
2 主要な委託調査の現状
第6章 国際協力
1 IAEA
2 OECD/NEA
3 国際海事機関(IMO)
4 その他
1 規制情報交換等
2 安全研究協力
第7章 安全確保のための基盤整備
第1節 技術者・研究者等の養成等
1 日本原子力研究所
2 原子力安全解析所
1 軽水炉改良標準化等の推進
2 品質保証活動
資 料 編