はしがき
原子力の開発利用を進めるに当たっては,安全の確保を図ることが大前提であります。このため,原子力安全委員会は,厳格な安全審査の実施,安全審査に用いる指針類の整備・充実,地元住民の方々の意見を聴くための公開ヒアリングの開催,事故・故障の教訓の安全対策への反映など安全確保のための各種施策を実施してきたところであります。
昭和53年の発足以来,現在に至るまでの間,原子力安全委員会は,米国のTMI事故,ソ連のチェルノブイル事故という2つの大きな原子力発電所の事故の発生に出会いました。この2つの事故にはさまれた7年の間に,我が国の原子力関係者は,TMI事故の教訓を汲み取り,所要の措置を講じるとともに,経験や研究の蓄積を重ね安全性の一層の向上に努力してまいりました。一方,チェルノブイル事故からは,ソ連原子力発電所事故調査特別委員会報告書の結論にありますように,「従来から認識しているものの,改めて心に銘ずべき」7つの項目が指摘されています。この2つの事故は,学ぶべき教訓の質と量において大きく異なっておりますが,その理由として事故の特徴が全く異なっていること,これまでの我が国の原子力関係者による経験や努力の積み重ねがあったことがあげられます。
このような経験や努力を国民に広く紹介することは,原子力発電所の安全対策の実状を少しでも明らかにし,原子力の安全確保上不可欠な国民の方々の理解を得る上で意義深いと考えます。このため,本年報の第1編では,原子力安全委員会が発足してから現在に至るまでの9年間における原子力発電所の安全確保対策について上述の7つの項目を視点として概説しました。
また,第2編においては,原子力発電所や核燃料施設など原子力施設全体に関する安全確保施策の現状を紹介しております。
原子力安全委員会は,今後とも,原子力の安全確保に万全を期していくため所要の施策の推進に全力を挙げて取り組んでいく所存でありますが,本年報が原子力の安全確保に関する国民の各位の理解を深める上で,一助となることができれば幸いであります。
昭和62年10月
原子力安全委員会委員長
御園生 圭 輔
目 次
第1編 原子力の安全性の一層の向上をめざして
1 BWR燃料の改良
2 PWR燃料の高燃焼度化
3 PCCVの採用
4 非常用炉心冷却系性能評価指針の改訂
5 反応度投入事象評価指針の制定
1 設備面での対応
2 事故・故障の分析評価と知識の収集
3 プラントの運転管理体制における対応等
4 緊急時の予測システムの研究開発等
1 運転員等の教育訓練等
2 品質保証のための安全意識の高揚
3 安全意識醸成のための国の活動
1 ヒューマン・ファクター総合調査
2 日本原子力研究所等における研究の現状
3 電力会社等における研究の現状
1 研究の経緯
2 研究の内容
3 研究の現状
1 原子力防災の意義
2 原子力防災体制
3 TMI事故及び防災対策への反映
4 チェルノブイル事故の反映事項
1 国際機関における活動
2 2国間協力による活動
第2編 原子力の安全確保関連施策の現状
第1章 原子力施設等の安全規制及び安全確保
第1節 実用発電用原子炉施設
1 安全規制の概要
2 許認可,検査等
3 運転管理
4 指針等の整備
5 放射線被ばく管理
6 放射性廃棄物管理
7 原子炉の解体
1 安全規制の概要
2 許認可,検査等
3 指針等の整備
4 運転管理等
5 放射線被ばく管理
6 放射性廃棄物管理
1 安全規制の概要
2 輸送の現状
3 設計及び容器の承認
4 輸送の安全基準等の整備
1 放射性同位元素等の取扱いに係る安全規制
2 線量基準等の整備
3 安全管理対策の実施等
第2章 放射性廃棄物の処理処分
1 原子炉等規制法による規制
2 障害防止法による規制
1 高レベル放射性廃棄物
2 低レベル放射性廃棄物
第3章 環境放射能調査
第4章 原子力発電所等周辺の防災対策
1 我が国の防災対策
2 緊急技術助言組織の設置
3 中央防災会議の決定
4 安全委員会原子力発電所等周辺防災対策専門部会等の活動
5 関係行政庁等の対応
第5章 原子力の安全研究等
1 低レベル放射性廃棄物処分の安全研究
2 高レベル放射性廃棄物等の処分の安全研究
1 概要
2 主要な委託調査の現状
第6章 国際協力
1 IAEA
2 OECD/NEA
3 国際海事機関(IMO)
4 その他
1 規制情報交換等
2 安全研究協力
第7章 安全確保のための基盤整備
第1節 技術者・研究者等の養成等
1 日本原子力研究所
2 原子力安全解析所
1 軽水炉改良標準化計画
2 品質保証活動
資 料 編