は し が き
原子力開発利用を進めるに当たっては,安全の確保を図ることが大前提であります。このため,我が国においては,厳格な安全審査の実施,安全審査に用いる指針類等の整備・充実,地元住民の方々の意見を聴くための公開ヒアリングの開催,事故・故障の教訓の安全対策への反映など安全確保のための各種施策を実施してきたところであります。この安全確保の姿勢は,我が国における原子力開発利用が本格的に開始されてから約30年を経て,原子力発電が総発電量の20%以上を供給するなど定着期に入った現在も変わることなく貫かれております。
一方,近年原子力開発利用の分野は,軽水型の発電用原子炉施設のみならず,新型動力炉の開発,核燃料サイクル事業の本格化等ますます多様化の様相を呈しており,これらに対しても従来の発電用原子炉施設と同様,安全確保に万全を期していく必要があります。その際,世界的にみても優れた運転実績を誇れるまでに至った我が国の原子力発電の安全確保に関しこれまでになされてきた規制の歩み,特にその基本となる安全確保の考え方を規範とすることは,新たな局面に対する一つの有力な手段と思われます。
かかる観点から,本年報では,第1編において発電用原子炉施設に対する安全確保の考え方を成文化して公表してきた安全審査の指針類をとりあげ,その歴史,体系,内容等を振り返りつつ,安全確保の考え方を明らかにするとともに,多様化する規制対象に対しても,各々その技術的,構造的特徴を踏まえつつ進められている安全確保の対策を,主にその基本的考え方の整理,構築といった面から概説しております。また,第2編においては原子力発電所や核燃料施設などの原子力施設に関する安全確保施策の現状を紹介しております。
原子力安全委員会は,今後とも,原子力の安全確保に万全を期していくため,所要の施策の推進に全力を挙げて取り組んでいく所存でありますが,本年報が原子力の安全確保に関する国民各位の理解を深める上で,一助となることができれば,幸いであります。
昭和60年12月
目 次
第1編 安全確保の基本的考え方と安全規制対象の多様化への対応
第1章 発電用原子炉施設の安全確保の基本的考え方と安全審査指針
第2節 安全審査指針類整備の歴史
第2章 安全規制対象の多様化への対応
1 高速増殖炉
2 新型転換炉
1 安全確保の考え方
2 指針類の整備
1 放射性廃棄物の処理処分対策
2 陸地処分の安全規制に関する基本的考え方
1 背景と安全の考え方
2 解体に係る安全確保のあり方の検討
1 放射性物質の輸送
2 放射性物質輸送の安全確保
第3章 原子力安全研究の充実と国際動向への対応
1 原子力施設等安全研究
2 環境放射能安全研究
3 放射性廃棄物安全研究
第2編 原子力の安全確保関連施策の現状
第1章 原子力施設等の安全規制及び安全確保
第1節 実用発電用原子炉施設
1 安全規制の概要
2 許認可,検査等
3 運転管理
4 放射線被曝管理
5 放射性廃棄物管理
6 原子炉の解体
1 安全規制の概要
2 許認可,検査等
3 指針,基準等の整備
4 運転管理等
5 放射線被曝管理
6 放射性廃棄物管理
1 安全規制の概要
2 輸送の現状
3 設計承認及び容器登録
4 輸送の安全基準等の整備
1 放射性同位元素等の取扱いに係る安全規制
2 線量基準等の整備
3 安全管理対策の実施等
第2章 放射性廃棄物の処理処分
1 原子炉等規制法による規制
2 障害防止法による規制
1 高レベル放射性廃棄物
2 低レベル放射性廃棄物
第3章 環境放射能調査
1 寄港時調査
2 非寄港時調査
3 調査結果の評価
第4章 原子力発電所等周辺の防災対策
1 我が国の防災体系
2 緊急技術助言組織の設置
3 中央防災会議の決定
4 原子力安全委員会原子力発電所等周辺防災対策専門部会等の活動
第5章 原子力の安全研究等
1 低レベル放射性廃棄物処分の安全研究
2 高レベル放射性廃棄物等の処分の安全研究
1 概要
2 主要な委託調査の現状
第6章 国際協力
1 国際原子力機関(IAEA)
2 経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)
3 国際海事機関(IMO)
4 その他
1 規制情報交換等
2 安全研究協力
第7章 安全確保のための基盤整備
第1節 技術者・研究者等の養成等
1 日本原子力研究所
2 原子力安全解析所
1 改良標準化
2 品質保証活動
資 料 編