第2節 輸送の安全規制
科学技術庁及び運輸省は,我が国における近年の核燃料サイクルに関連する事業活動及び研究開発活動の活発化と国際輸送の増大に対応して,安全規制の強化を図る観点から,国際原子力機関(IAEA)の放射性物質安全輸送規則(1973年版)に基づいて原子力委員会が昭和50年1月に決定した「放射性物質等の輸送に関する安全基準について」に従い,更に放射線審議会の審議を経て,核燃料物質の輸送に係る関係法令を整備し,昭和53年1月から施行してきた。その後,昭和53年7月には,核燃料物質等の輸送に関する行政分担の明確化及び行政措置の新設を内容の一部とする原子炉等規制法の改正を含む原子力基本法等の一部改正法が成立した。
以上のような経緯を経て,現在,核燃料物質の輸送の安全規制は,陸上輸送については原子炉等規制法に基づき科学技術庁,運輸省及び都道府県公安委員会により,海上輸送については船舶安全法に基づき運輸省及び海上保安庁により,また,航空輸送については航空法に基づき運輸省により,それぞれ実施されている。
1 陸上輸送の安全規制
科学技術庁は,核燃料輸送物(核燃料物質を輸送容器に収納し,輸送する状態としたもの。)に関する安全基準を,原子炉等規制法に基づく総理府令「核燃料物質等の工場又は事業所の外における運搬に関する規則」等に定めるとともに,輸送の都度,輸送される核燃料輸送物がその安全基準に適合するものであることを確認している。この安全基準は,核燃料輸送物が輸送中に通常受ける振動,衝撃等に耐えることはもちろん,荷役作業中の誤操作,輸送中の交通事故等の事故時においても,安全性を損うことがないとの観点からIAEAが定めた規則に基づいている。
また,核燃料輸送物の確認に当っては,先ず,核燃料輸送物の設計が安全基準に合致するものであることについて,科学技術庁の厳重な審査を経,その結果,妥当と認められるものについて,設計承認が行われている。次に,個別の輸送容器が承認された設計どおりに製作され,保守されることが確認されたうえで容器登録が行われ,最後に,輸送の都度,収納する核燃料物質が承認された設計仕様に合致し,かつ,これが登録容器に収能されることの確認がなされたのち,科学技術庁長官の車輌運搬確認証が交付される。
一方,運輸省は,車両への核燃料輸送物の積載方法,車両に係る放射線量率,輸送物及び車両に係る標識並びに車両1台当りの積載限度等の輸送方法に係る安全基準を原子炉等規制法に基づく運輪省令「核燃料物質等車両運搬規則」等に定めるとともに,使用済燃料等の輸送の場合には,輸送の都度,輸送方法が安全基準に適合するものであることについて確認を行っており,運輸大臣の核燃料輸送物確認証を交付している。また,輸送方法に係る安全基準も,輸送物の場合と同様に,輸送の安全の観点からIAEAが定めた規則に基づいている。
さらに,核燃料物質を陸上輸送する場合には,あらかじめ,出発地を管轄する都道府県公安委員会に届け出なければならない。届け出を受けた公安委員会は,通過地及び目的地を管轄する公安委員会に通知し,意見を聞いた上で,輸送経路,日時,車両速度,車両編成,車両距離等について必要な指示を行うこととなっている。また,関係都道府県警察によって,パトロールカーを配置するなどして所要の警察措置がとられている。
2 海上輸送の安全規制
海上輸送の場合においても,基本的には陸上輸送の場合と同様の安全規制が行われている。すなわち,運輸省は,核燃料輸送物に関する安全基準及び船舶への積載方法,標札等核燃料輸送物の運送の方法に関する安全基準を船舶安全法に基づく運輸省令「危険物船舶運送及び貯蔵規則」等に定め船積みの都度,核燃料輸送物及び運送の方法がこれら安全基準に適合するものであることの確認を行っている。
なお,核燃料輸送物に関する安全基準は基本的には陸上輸送に供される核燃料輸送物に関する安全基準と同等であり,従って,陸,海一貫輸送される核燃料輸送物については,原子炉等規制法に基づく内閣総理大臣の確認が行われた場合は船舶安全法に基づく運輸大臣の確認を受けたものとみなすことになっている。
他方,核燃料物質を船舶輸送する場合には,当該船舶の船長は管区海上保安本部の長に対して,放射性物質等運送届を提出することが必要であり,本部の長は,公共の安全を図るため,運送について必要な指示をすることができることとなっている。
3 航空輸送の安全規制
核燃料物質の航空輸送に関する安全基準は,航空法に基づく運輪省令「航空法施行規則」等に定められており,積載前に運送物及び運送方法の基準適合性について運輸大臣の確認を受けることとされている。
輸送物に関する安全基準は,基本的に陸上輸送の安全基準と同等であり,従って陸,空一貫輸送の場合,原子炉等規制法に基づく内閣総理大臣の確認を受けだ輸送物については,輸送物の基準適合性について運輸大臣の確認を受けたものとみなされる。