原子力安全年報
─平成元年─
原子力安全委員会
は し が き
原子力の開発利用を進めるにあたっては,安全の確保を図ることが大前提であります。このため,原子力安全委員会は,厳格な安全審査の実施,安全審査に用いる指針等の整備・充実,地元の意見を聴くための公開ヒアリングの開催,故障・トラブル等の教訓の安全対策への反映など安全の確保のための各種施策を実施してきております。
近年,特に国民の関心が高くなっている原子力発電所の安全確保についても,米国スリーマイルアイランド原子力発電所事故,ソ連チェルノブイル原子力発電所事故の際には,事故調査特別委員会を設置して,事故の教訓を汲み取り,所要の措置を講じてまいりました。また,我が国の原子力発電所の故障・トラブル等が発生した場合も所管の行政庁から報告を受け,調査・審議を行うなど,発足以来,安全性の向上に努力しているところであります。
原子力関係者の努力等により,これまで,我が国の原子力発電所では,周辺公衆に影響を与えるような事故は発生していません。しかしながら,周辺公衆に影響を与える事故がないからそれでよしとするのではなく,たとえ些細なものであっても,同様な故障・トラブル等は再度起こさないという姿勢で原子力関係者が今後とも不断の努力をすることが重要であります。
そこで,本年の原子力安全年報第1編では,原子力発電所の安全確保の考え方について概説するとともに,近年の原子力発電所の故障・トラブル等のうち,原子炉再循環系,蒸気発生器,経年劣化,ヒューマンファクターに係るものについて現状を分析し,安全確保対策に反映すべき教訓の摘出を試みました。
また,第2編においては,原子炉施設や核燃料施設等原子力施設全体に関する安全確保施策の現状を紹介しております。
原子力安全委員会は,今後とも,原子力の安全確保に万全を期していくため,所要の施策の推進に全力を挙げて取り組んでいく所存でありますが,本年報が原子力の安全確保に関する国民各位の理解を深める上で,一助となることができれば幸いであります。
平成元年10月
目 次
第1編 原子力発電所にあげる故障・トラブル等とその教訓の反映
第1章 原子力発電所の安全確保の考え方と故障・トラブル等
第2章 原子力発電所における故障・トラブル等の分析
1 原子炉再循環系の概要
2 原子炉再循環系の故障・トラブル等の事例
1 蒸気発生器の概要
2 蒸気発生器伝熱管の故障・トラブル等の事例
1 経年劣化と故障・トラブル等
2 故障・トラブル等の事例
3 経年劣化への対応
4 経年劣化と定期検査
5 経年劣化に関連した研究等の現状
1 ヒューマンファクターと故障・トラブル等
2 故障・トラブル等の事例
3 ヒューマンファクターに関する対策の現状
4 ヒューマンファクターに関する研究等の現状
第2編 原子力の安全確保関連施策の現状
第1章 原子力安全委員会の活動
1 原子力安全委員会による安全審査
2 指針類の改訂等
3 公開ヒアリングの実施等
4 安全研究の推進
第2章 原子力施設等の安全規制及び安全確保
第1節 実用発電用原子炉施設
1 安全規制の概要
2 許認可、検査等
3 運転管理
4 指針等の整備
5 放射線被ばく管理
6 放射性廃棄物管理
7 原子炉の解体
1 安全規制の概要
2 許認可、検査等
3 指針等の整備
4 運転管理等
5 放射線被ばく管理
6 放射性廃棄物管理
1 安全規制の概要
2 輸送の現状
3 設計及び容器の承認
4 輸送の安全基準等の整備
1 放射性同位元素等の取扱いに係る安全規制
2 線量基準等の整備
3 安全管理対策の実施等
第3章 放射性廃棄物の処理処分
1 原子炉等規制法による規制
2 障害防止法による規制
1 高レベル放射性廃棄物
2 低レベル放射性廃棄物
第4章 環境放射能調査
第5章 原子力発電所等周辺の防災対策
1 我が国の防災対策
2 緊急技術助言組織の設置
3 中央防災会議の決定
4 原子力安全委員会原子力発電所等周辺防災対策専門部会等の活動
5 関係行政庁等の対応
第6章 原子力の安全研究等
1 低レベル放射性廃棄物処分の安全研究
2 高レベル放射性廃棄物等の処分の安全研究
1 概要
2 主要な委託調査の現状
第7章 国際協力
1 IAEA
2 OECD/NEA
3 国際海事機関(IMO)
4 その他
1 規制情報交換等
2 安全研究協力
第8章 安全確保のための基盤整備
第1節 技術者・研究者等の養成等
1 日本原子力研究所
2 原子力安全解析所
3 その他
資 料 編