第1章 原子力発電所の安全確保の考え方と故障・トラブル等

第1節 原子力発電所の安全確保の基本的考え方

 原子力発電所においては,その運転により原子炉内に放射性物質が発生,蓄積されるという特性を考慮し,一般の産業施設等における措置以上に高度な安全確保のための技術的措置が講じられている。
 この安全確保の基本的な考え方は,放射性物質を蓄積することによる潜在的な危険性を顕在化させないよう,平常運転時においては放射性物質を確実に管理するとともに,異常の発生の未然防止,事故への拡大防止を徹底することである。

 具体的には,まず第一に平常運転時において原子炉の運転に起因する放射線による周辺公衆の被ばくを合理的に達成できる限り低くするよう管理することである。これは,原子炉の運転によって発生する放射性物質については,できる限り捕捉して原子炉施設内部に貯蔵保管する等により,環境に放出される放射性物質の量を十分抑制しうるようにするとともに,施設からの放射線による被ばくを遮へい壁等により十分低くしうるようにすることである。また,放射性物質を環境に放出する場合には,これによる周辺公衆の被ばくが法令に定める線量当量限度以下とすることはもちろんのこと,その濃度が十分低いことを確認するなど適切な管理を行いつつ排気筒または放水口を通じて外部に放出することとされている。

 第二は,異常の発生を未然に防止することはもちろんのこと,仮に異常が発生したとしてもそれが事故まで拡大し,周辺公衆に放射線障害を及ぼすことのないよう十分な事故防止対策を講じることである。これは,多重防護の考え方と言われており,詳細は後述する。

 第三は,万一の事故を想定した場合でも,これによる周辺公衆の安全が確保されるよう,原子炉の立地にあたっては,その安全防護設備との関連において十分に公衆から離れていること等の条件を備えさせることである。
 原子力発電所は,これらの周辺公衆の放射線防護,多重防護及び適切な立地条件等の確保という基本的な考え方に基づいて安全対策が講じられることになっているが,実際にこのような対策が講じられているかどうかに関しては,原子力発電所の基本設計段階,詳細設計段階,建設段階,運転段階の各段階ごとに国により個別に審査,検査等が行われるなど,法令等に基づいて厳しい安全規制が行われている。